女子アナにとって管理職昇進は「ご褒美」ではない? フジ・佐々木恭子アナの昇進に見る、「花形」職業の「夢の終わり」
フジのイメージとは対極 「お局」キャラの日本テレビ・豊田順子アナは退社
一方、日本テレビでは、長年「お局」のような存在感で後輩を指導してきた豊田順子アナが、先月退社した。豊田アナといえば、「news every.サタデー」や選挙特番などでの冷静沈着な進行力や、報道現場での取材経験、育成力においても高い評価を受けてきた存在である。裏方の仕事にも精通し、後輩指導にも情熱を注いできた。だが、彼女は「次のステージへ行く」と静かに局を去る道を選んだ。
佐々木アナは昇進、豊田アナは退社。管理職も務める女子アナの対照的な進退が物語るのは、テレビ局における「女子アナの出世」の難しさだ。
女子アナは、そもそも管理職としてのキャリアパスが明確に設計されていない職種である。いわば「花形」のまま終わる構造がデフォルトになっていた。それでも近年、男女平等の流れの中で、一定数の女性アナウンサーが副部長・部長といった管理職に登用され始めている。だがその道は、本人の希望や適性というより、「画面に出なくなってきた人に次の居場所を用意した」かのような、消極的配置に見えることも多い。
さらに女子アナという職業は、視聴者からの期待や幻想が極めて強く、それがテレビ局の編成方針にも色濃く反映される。フジテレビはその典型例だ。軽やかに笑い、時に甘え口調でツッコミを入れる。MCや男性芸人にいじられながらも、それをうれしそうに受け止める。女子アナに求められる能力は原稿読みや進行管理ではなく、隣にいる男性の顔色を読み、気に入られるような振る舞いができる力ということだろう。
中でもフジの人気アナたちは、「めざましテレビ」やバラエティー番組で「こんな子と結婚できたらいいな」「気の利く彼女」として理想像を提供してきた。この路線がフジ人気を博したのは事実だが、同時に仕事人としてのプロフェッショナリズムは後回しにされてきたのだろう。親しみ、甘え、ノリの良さ──その延長線上に管理職としての冷静な判断力や組織統率力は、なかなか見えてこない。
一方、日テレの女子アナ像は対照的だった。フジのように、「原稿読みはイマイチだがバラエティーでは大人気」という偏ったタイプが少ない。バラエティーに強い水卜麻美アナも、ニュースでの進行の正確さに定評があり、ナレーションでも実に落ち着いた語り口を見せる。そのバランスの良さこそ、まさに豊田アナのような管理職による指導のたまものなのだろうが、「面白みのなさ=印象の薄さ」と、いまいち人気の出ない女子アナも多かった。
佐々木アナは昇進し、豊田アナは局を離れた。親しみと緊張感のどちらを取るか──女子アナのキャラ設計は局の文化によって大きく左右される。もしかすると、優等生で真面目で厳しい女子アナより、「感じよく、親しみやすい」女子アナのほうが、テレビ局においては「理想の上司」として求められているのかもしれない。ただ同時に、「昇進する女子アナの姿」としてどちらが視聴者にとって自然と感じられるか、という微妙な空気も漂っている。
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