27年に「品川―名古屋間」開業のはずが「時期は見通せない」…リニア新幹線に今も影を落とす川勝平太・前静岡県知事“負の置き土産”

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開業を遅らせて辞任!?

 もともと川勝氏は問題発言の多い知事として知られていた。そして川勝県政は舌禍が原因となって終焉を迎える。

 2024年3月、JR東海はリニア新幹線の品川─名古屋間の「2027年の開業」を断念すると発表した。川勝氏が県内の工事に反対しており、南アルプストンネル静岡工区の着工のメドが全く立っていなかったからだ。

 一方の川勝氏は同じ年の4月1日、県の新規採用職員に訓示を行った。その際、「県庁はシンクタンクだ。毎日、毎日、野菜を売ったり、牛の世話をしたり、モノを作ったりとかと違い、基本的に皆さま方は頭脳、知性の高い方たち。それを磨く必要がある」と呼びかけた。

 これでは「野菜を売ったり、牛の世話をしたり、モノを作ったり」する人々の知性は高くない、と知事が断言したことになる。当然のことながら県庁には抗議が殺到した。

「川勝さんは『発言に問題はない』と反論していたのですが、翌2日に突然『6月県議会をもって職を辞そうと思う』と辞意を表明しました。驚いた記者が質問しても無視したため、県庁記者クラブが抗議して3日に会見が開かれました。ところが川勝さんは会見で『リニア問題に一区切りついたことも辞任の理由だ』との説明を始めたのです。困惑した記者が質問を繰り返しましたが、川勝さんは『自分の尽力でリニアの開業を遅らせた』と自画自賛するような態度が目立ち、開業を遅らせたことを花道に知事を辞めるような口ぶりだったのです」(同・担当記者)

“置き土産”の重さ

 2024年4月の県知事選で鈴木康友氏が当選すると、県の態度は一変した。静岡県の専門部会は今年6月、大井川の水資源問題に関してJR東海の対策を認めた。

 静岡工区の工事を始めるためには、工事に伴う残土の管理問題や、生態系への影響など、まだまだ解決しなければならない課題がある。

 そのため品川─名古屋間の開業は2035年以降になると考えられている。まだ着工が見えていない現時点でも、当初の予定より8年も遅くなっているのだ。改めて川勝氏が残した“置き土産”の重さを痛感する人は多いに違いない。

デイリー新潮編集部

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