「予約なし」「行列なし」でも入れる“穴場パビリオン”とは…来場者1000万人突破「大阪万博」 7回通ったライターが伝授する「疑似世界旅行」の楽しみ方

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EXPOホンヤクというツール

 実際、私はコモンズで、ジャマイカや東ティモールの人たちに日本滞在中のことを聞くことができた。

――ジャマイカの魅力を教えてください。

「温かい、おもてなしの心あふれる人々と素晴らしい料理がある美しい国です。音楽は至るところに流れており、あなたもきっと楽しく訪れることができるでしょう」

――日本の印象はどうですか?

「日本の人たちは親切で、滞在を楽しんでいます。私自身は、三回目の日本訪問です。旅行博(国内外の観光地が出展する旅の祭典)に出展したジャマイカ・ブースのスタッフとして、しばらく東京に出張したことがありました。そして今回、万博のスタッフとして大阪に来ました。日本の気候は非常に寒いですね(話をうかがった4月半ば時点)。自分の経験や情報からもうすこし少し暖かいだろうと思っていましたが。それでも人々の温かさに触れました。ジャマイカは一年中とても暖かいんですけどね」

――今回の日本で新しく体験したことは何ですか?

「以前日本を訪れたときはホテルに泊まり、料理も用意されていました。今は日本人のようにアパートで生活しています。そのため、自分で買い物をして、自炊もします。良い経験です」

 東ティモールのスタッフとの会話は以下。

――東ティモールの魅力は?

「私たちの国はとても美しいです。美しい海に囲まれていて、そこにはたくさんの種類の水中動物がいて、ダイビングを楽しむことができます。また内陸には美しい山々がそびえています。山の高さは約2900メートルです」

――日本についてどう思いますか? その印象は?

「非常に礼儀正しく、文化的です。都市はとても清潔で、人々は勤勉ですね。高齢者の方々がまだ働いているのを見て驚きました。これはとてもよいことです。私たちの国では高齢者は働きませんから」

――日本国内を旅行しますか?

「大阪の他に私は京都と東京に行きます。日本で二ヶ月滞在し、東ティモールに戻る予定です」

 この万博では来場者にEXPOホンヤクというスマホ用アプリが用意されている。文字入力(30言語対応)・音声認識(13言語対応)の両方で翻訳が可能。スタッフのみなさんは皆、コミュニケーション大歓迎。話しかけると、ていねいに答えてくださる。EXPOホンヤクを援用して、ぜひ疑似海外体験を楽しんでほしい。

疑似海外体験

 また、万博は、パビリオンに入らなくとも、パビリオン前やイベント会場で行われるパフォーマンスも楽しい。各国から派遣された腕利きのパフォーマーが、その国の伝統的な芸能からロックまで、演奏や舞踊を披露するのだ。私が目撃したのは、全身を覆う真っ白な衣装(アバヤ)を着た男たちが勇壮に歌い踊るパフォーマンス(アラブ首長国連邦・カタール)、フラメンコを取り入れたバンドスタイル(スペイン)、ロックバンド(カナダ)の演奏、エキゾチックな衣装と歌と踊り(マレーシア)、ピアノ連弾(ハンガリー)などである。どれも足を止めて見てしまうほど見事なものだった。

 万博会場では、このように外国との様々な出会いがそこかしこにある。現地に行かないと体験しづらい、生のコミュニケーションができるだけに貴重である。異常な円安と物価高で、海外へ簡単に行けなくなった昨今、万博を利用し、飛行機に乗らずとも行ける「疑似海外旅行」をたくさんの人にお勧めしたい。

西牟田靖(にしむたやすし)
ノンフィクション作家。1970年大阪府生まれ。日本の国境、共同親権などのテーマを取材する。著書に『僕の見た「大日本帝国」』、『わが子に会えない』、『子どもを連れて、逃げました。』など。

デイリー新潮編集部

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