「予約なし」「行列なし」でも入れる“穴場パビリオン”とは…来場者1000万人突破「大阪万博」 7回通ったライターが伝授する「疑似世界旅行」の楽しみ方
ミャクミャク館になった
時間帯によっては20~30分並ぶが、ぜひ訪れてほしいのがサウジアラビア館だ。大阪・関西万博に続いて行われる5年後の万博開催地が、中東の産油国として有名なサウジアラビア。次回の開催地だけに、規模にしろ、人員体制にしろ、非常に力が入っていた。
巨大で白いモザイク建物は海外パビリオンの中では最大規模。7つの建物があり、その間に中庭がある。館内や建物の外には白装束で、頭に黒い輪っかを着けた民族衣装の男性スタッフが各所に常駐していて、場内誘導を流ちょうな日本語でこなしていた。
「こっちのゾーンは混んでばっかりなんで、早く回りたい人はまっすぐ行った方が良いですよ」と関西アクセントの日本語で誘導する。衣装と関西弁のギャップが印象に残った。館内では、打ち込みのダンスミュージックと白装束が意外な取り合わせのDJパフォーマンス、スポーツ分野での活躍、雄大な自然、ハイパーな都市設計、オアシス、サウジ初の女性宇宙飛行士などが圧倒的なビジュアルによって展示・紹介される。この国の課題である脱石油依存のための模索、その本気度が伝わってきた。2030年リヤド万博を行うだけに力の入れ方が伝わってくる。あえて宗教色は消してあるようにも見えた。
ヨーロッパ北部、かつてはソ連に占領され、社会主義連邦の構成国となっていたバルト3国。そのうち二カ国が出展しているバルト館(ラトビアとリトアニア)。中に入ると深い森の中にいるような匂いが五感を刺激する。両国の約300種類の薬草が展示されていたり、自然由来の水の凝縮物を使った常に濡れている緑色の壁WALL OF THE FUTUREがあったり。そこでは入場者が思い思いのメッセージを指で記している。館内では、現地スタッフが流ちょうな日本語でパビリオンの説明をしてる。このパビリオンでは、5月に一騒動があった。展示してあったミャクミャクのぬいぐるみが盗まれたのだ。それが報道されると、心配した人たちが全国各地からミャクミャクのぬいぐるみを送ってきた。その数は実に約150にもなった。スタッフにその後を聞くと、
「カウンターのすべてがミャクミャクで埋まり、ミャクミャク館になりました。その後、大阪の子ども病院にすべてプレゼントし、今はバルト館に戻りました」
国花であるジャスミンに建物上部が覆われたチュニジア(北アフリカ)のパビリオン。入るとジャスミンの甘い香りが漂う。「水資源の管理と最適化」「科学と医学の進歩」などの情報を視覚で訴える360度映像や、スター・ウォーズのロケ地としても有名なチュニジア砂漠を再現したゾーンなどを抜け、出口にはジャスミンの花で天井と壁が覆われた廊下が現れる。ネットだと視聴覚のみの情報だけになってしまいがちだが、匂いを強調した展示は万博ならではだ。
コモンズという穴場
単独のパビリオンではなく、3~20カ国以上が、ひとつの建物に集結しているコモンズというパビリオンが、この万博には、AからFまで6つある(Eは万博漫画展になっている)。これらはすべて予約不要。各国の展示はブース単位なので、迫力映像や、門外不出の芸術作品などの貴重な展示物、または花や食材などの匂いを伴った展示……といった凝りに凝ったものは少ない。しかし、その分、展示は手作り感覚で、そこが魅力だ。
たとえば、カリブ海の島国、ジャマイカ。同国が冬季五輪に出場したときのボブスレーのカートに乗れたり、レゲエの神、ボブ・マーリーや、世界最速の短距離走者、ウサイン・ボルトの等身大人形と記念撮影ができたりする。北西アフリカにある砂漠の国、モーリタニアからは、やはり等身大のヒトコブラクダの模型とともに、自国から持ち込んだとおぼしきサハラ砂漠の砂を展示。しかもその砂を触ることができたりした。
アラビア半島南部にあるイエメンは、民族衣装を着て、ターバンのようなものを頭に巻いた、アラビアンナイトの世界から出てきたかのような男性たちが、極甘スイーツやコーヒーなどでもてなしてくれた。
現地スタッフとの距離はかなり近く、彼らとふれあったり、会話を楽しんだりするチャンスはかなりある。
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