「電話から女性の声が聞こえて…」 浜木綿子がいま明かす「猿翁」との別れと愛息「香川照之」への思い
背後から女性の声が
順調に見えた結婚生活に影が差したのは昭和41年。浜が東京・帝国劇場で、舞台「風と共に去りぬ」に出演していた折のことだった。
本書では、その経緯が初めて明かされている。
「仕事で大阪に出ていた猿翁から、浜が待つ自宅に電話が入った際、背後から女性の声が聞こえたというんです。浜が“誰かいるの?”と尋ねると、猿翁は“いないよ”と惚(とぼ)けた。それでも再び声が聞こえたので、浜は電話をガチャンと切った。“打ち合わせ中だ”とでも言えば済むことなのに、ウソをつかれたことが許せなかったそうで、その後に猿翁がかけ直してきても一切出なかったとか」
数日後、帰京した猿翁は浜に対して謝罪の言葉を口にするどころか、一方的に離婚を切り出したという。
「浜が“なんでですか?”と理由を聞いても、猿翁は“別れよう”の一点張り。そのまま家を出ていってしまったのです」
それからおよそ1年後、猿翁は浜が待ち続ける自宅に戻って来た。
「猿翁の気持ちは決まっていたようで、神妙な面持ちで“やっぱり別れよう”と切り出した。浜は“分かりました”と即答したものの、息子の親権は譲らなかった。猿翁はそれを受け入れましたが、浜は〈一番の宝物をなんとか守ることができた〉と振り返っています」
再会は「何ともいえない気持ち」
浜は猿翁の不倫相手には一切触れていないが、
「家を出た猿翁が35年の同棲生活を経て、平成12年に籍を入れた女優の藤間紫(故人)です。関係者の間では周知の事実でした」
女手一つで育て上げた照之は東京大学に進学し、卒業後は俳優の道に進んだ。
「その照之は、テレビや映画の売れっ子俳優として活躍する傍ら、46歳の時に歌舞伎界に入って市川中車を襲名しました。浜は息子の気遣いで、その襲名披露公演の稽古場で猿翁と四十数年ぶりに再会しています」
浜はその折の心境を次のように語っている。〈何ともいえない気持ちでした。高揚感もあったし、今更という思いもありました〉。
いずれも濃いエピソードばかり。昭和、平成、令和を生きた“女の一代記”ともいえそうだ。






