タイパ世代の若者はなぜ「数学は割に合わない」と考えるのか…マジメな会議より、ムダ話から「斬新な企画」が生まれる理由
この春、就職した新入社員たちも、そろそろ研修を終えてそれぞれの部署に配属される頃だろう。大学までストレートに出た場合、今年の新入社員は2002年生まれで、いわゆるZ世代(1996~2010年生まれ)に属する。あと10年もしないうちに、今度はα世代(2010年代生まれ)が各職場に入ってくることになる。
【写真】いまの若者たちが重視する「タイパ」の「具体例」3つとは
これらの世代の若者たちは、「タイパ」「コスパ」を重視する傾向があるとよく言われる。私立中高一貫校に数学科講師として勤務しながら、「企業の担任の先生」として一般企業で人事研修や講演活動に取り組む和辻龍氏も、教え子から「数学の勉強は割に合わない」と言われてしまったことがあるという。
和辻氏の近著『うまくいく思考の転換』(産業能率大学出版部)では、効率性重視の新入社員に向けて、一見非効率でつまらない会社員生活を楽しむ思考法を伝授している。その一部を抜粋してみよう。
「時間対効果」から脱却しよう
皆さんは、「○○対効果」と聞いて、どんな言葉が思い浮かびますか? すぐに思いつくのが、費用対効果、投資対効果、そして時間対効果といった言葉でしょう。時間対効果はタイパ(タイムパフォーマンス)と呼ばれ、費やした時間に対して満足いく成果を得られるかどうかを計り、「タイパが良い(または悪い)」などと判断します。では、「時間対効果」に対する思考の内部構造は、どのようになっているのでしょうか。
学校の定期試験前に、バスケット部の高校2年生たちが「数学は割に合わない」と声高に叫んでいました。数ある教科の中で、残念ながら数学は嫌われ者のようです。数学教師として「数学は嫌い」という言葉は幾多も耳にしてきましたが、「割に合わない」は、初めて聞きました。どのような意味が込められているのかを生徒たちに尋ねたところ、雄弁に解説してくれました。
「地理の試験では、例えばアフリカ大陸の国名が20点分出題されるんですよ。暗記に必要な時間がだいたい30分だとすれば、30分の勉強で20点取れる計算です。だけど、数学の場合は、応用問題になると1題を理解するのに20分ぐらいかかるんですよ。その割に、配点はせいぜい7点ぐらいですよね。その上、試験では数字を変えて出題されることもあれば、計算ミスをしてしまうこともあるし、勉強しても得点できない可能性があるんです。だから暗記科目と比べて、数学は割に合わないんです」
要するに、数学は「勉強時間に対する恩恵が少なく不確定な教科」と見なされているようです。時間対効果が得られないということです。生徒たちは、数学はそこそこの勉強でそこそこの点数を取って「耐え」、暗記科目で要領よく確実に「稼ぐ」という、時間対効果を重視した勉強時間の振り分け方が全体の評定平均を底上げするための効果的な作戦だと言うのです。
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