ダルトンの要求は「愛のムチ」といえるか 企業防衛のプロが「会社は株主のものではない」と断じる理由

ビジネス 企業・業界

  • ブックマーク

ダルトンの提言は「愛のムチ」なのか

 そして実は、株主そのものが「会社は株主のものである」という理屈を自ら否定している実態もあるのです。

 今回のフジMHDの不祥事に関して、アクティビストのダルトンは会社を徹底的に糾弾しました。これでもか!これでもか!というくらい会社を痛めつけています。

 本当に会社が株主のものであるなら、それは株主にとって利益という金の卵を産み続けてくれる鶏ともいえる大切なものですから、株主自身が会社を痛めつけるようなことはしないはず。みなさんが大切にしている宝物を、自分自身で乱暴に扱ったり、たたきつけて壊したりすることはしないでしょう(まあテニスプレーヤーがラケットを叩き壊すことはありますけど、あれは非合理的な行為なのでおいときます。替えがきくから叩き壊すとも言えますね)。

 そういわれると「いや、ダルトンは株主として愛のムチをふるったのではないか?フジMHDの悪行を非難し、よい会社になってほしいからネガティブキャンペーンを張ったのではないか?」と思った方もいらっしゃるでしょう。

 しかし、私に言わせれば、あんなのは愛のムチではない。

〈有料版の記事【経営層必読「会社は株主のもの」の妄信に落とし穴あり ダルトンvsフジテレビの事例から学ぶアクティビスト対応の「いろはの“い”」】では、株価が上がり続けるフジMHDの懸念や、「会社は株主のもの」という妄信の“落とし穴”など、企業がアクティビストと対峙していく上で知っておくべきことについて詳述している〉

鈴木賢一郎(すずき けんいちろう)
1997年野村證券入社。引受審査部、IBコンサルティング部などを経て、2016年に独立し株式会社IBコンサルティングを創業。野村證券時代から買収防衛を得意とし、ドン・キホーテによるオリジン東秀の買収、スティール・パートナーズによるブルドックソースの買収案件などで「防衛」に導いている。現在は、平時における企業防衛体制の構築や、有事における企業防衛戦略の実行、IR戦略、アクティビスト対応など、経営にまつわるコンサルティング業務に従事。著作に『敵対的M&A防衛マニュアル』(中央経済社)、『株主総会判断型の買収防衛策』(旬刊商事法務No.1752)など(両者とも共著)。最新刊は『株式投資の基本はアクティビストに学べ プロの投資に便乗する「コバンザメ投資」の始め方・儲け方』(朝日新聞出版)。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。