「貧打戦ばかり」のプロ野球で危惧される深刻なファン離れ…いよいよ導入の声が高まる「飛ぶボール」とセ・リーグ「DH制」 元メジャーリーガーも提唱
上原浩治氏も現状に警鐘
「投高打低」になっている根本的な原因の一つとして考えられるのが、プロ野球の統一試合球が“飛ばない”問題である。
日本野球機構(NPB)や公式球を製造するミズノ社が公に認めているわけではないが、昨年の春以降、現場の選手たちからは「ボールが飛ばない」という声が出続けている。
そんな状況に声を上げ始めた著名なOBもいる。例えば元メジャーリーガーの上原浩治氏は、「Yahoo!Japan」に掲載された自身のエキスパート記事(6月26日付)で、「野球は『点取りゲーム』で『2-1』の投手戦よりも、同じ接戦でも『5-4』『6-5』のように点数が入ったほうが盛り上がる」と持論を展開。その上で、「もちろん、息詰まる投手戦も見応えはある。エース級同士の1点勝負は球場にも緊張感が漂う。しかし、どの試合でも点数が入りにくいとなれば、面白みに欠けてしまう面は否めない」と、行き過ぎた「投高打低」の現状に警鐘を鳴らしているのだ。
さらに「日本のファンに楽しんでもらうために、ボールを少し飛ぶように規定を変えてみるのはどうだろうか」「少しの変化がスタジアムの盛り上がりにつながるのであれば、検討の余地はあっていいと思う。皆さんはどう考えますか?」と、ボールの変更をファンに問いかけている。
上原氏の忖度のない意見には当然、反対の意見もあるだろう。しかし、多くのファンにとって野球観戦の醍醐味は、応援するチームが得点した際の歓喜の瞬間にあるのは間違いない。5年前と比べ、その機会が減っているのは明らかで、不満が漏れてくるのは当然なのだ。
DH制の有無も「投高打低」に拍車?
また、「投高打低」がより顕著となっているのが、セ・リーグの方だ。今季の両リーグの1試合平均得点を比べると、パ・リーグの6.39に対して、セ・リーグはわずか5.82。両者の間には小さくない差が生まれている。
その理由として考えられるのが、やはり指名打者(DH)制の有無である。日本ハムのレイエスや、ソフトバンクの山川穂高のように、DH制を採用しているパ・リーグの各球団には“打つ専門の選手”がいる。もちろん、セ・リーグ球団の本拠地で戦う際はDH制を使えないハンデはあるものの、それも年間わずか9試合だけだ。
さらに、DH制が間接的に投手の能力アップに寄与している面もある。9番打者がほぼ自動アウトのセ・リーグに対して、パ・リーグの投手は、普段から常に9人の打者と対峙しており、気を抜くことが許されない。これも長い目で見ると、パ・リーグ投手のレベルアップにつながっているという声もある。
ここ数年の交流戦はセ・パがほぼ互角の戦いを見せていたが、今季はふたたびパ・リーグが圧勝。これを機にセ・リーグのDH制採用の声が高まったのは間違いない。
また、高校野球や大学野球にもDH制採用の波は押し寄せている。日本高野連は早ければ来年の選抜からDH制の導入を検討中。また、東京六大学野球も来年からの導入を決定済みだ。セ・リーグにはいまだDH制に否定的な球団も多いが、外堀は埋まりつつある。
上原氏が言うように、行き過ぎた「投高打低」はファン離れにつながりかねない。今こそ、飛ぶボールやセ・リーグにおけるDH制導入の議論を活発化させる時ではないだろうか。





