「安倍元首相」銃撃から3年 かつてトランプも降参…石破政権が見習うべき、最側近記者らが目の当たりにした「安倍外交の秘訣」とは
日中韓共同宣言のあと、安倍元首相が李克強首相を「心配」した理由
安倍元首相が得意とした「トップ外交」の面目躍如たる逸話だが、その背景には「時代の要請」があったと、産経新聞社論説委員兼政治部編集委員の阿比留瑠比氏は言う。
「安倍さんは常に“世界で日本がどう見られるか”を意識して外交に臨んでいました。官僚が細かい点を決めてから首脳同士が形式的な会談を行うのが一般的だった日本の外交を転換し、まず首脳同士で物事を決める形に変えたのです。即断即決型のトランプ氏のようなリーダーが台頭する世界情勢の中で、日本が“決められない国”と見られることを避けたかったのだと思います」
トランプ氏と互角以上に渡り合えた理由は、その手法が奏功したからだけではない。
「安倍さんは外交のコツについて“相手の政治的リスクを考慮して交渉すること”をあげていました。要するに相手の国内での立場がマズくなるような要求は極力控えるということ。内政が大変なのはどこも同じなので、それに理解を示せば相手も胸中を明かしやすくなります」(同)
岩田氏が知る逸話の一つに、安倍元首相のこうした外交姿勢を表すものがある。
「2018年5月の日中首脳会談の際、安倍さんは当時の首相・李克強氏と日中韓共同宣言の文案を擦り合わせていました。その中で“歴史を鑑として”という一文があり、歴史問題を強く想起させすぎると安倍さんは懸念を示したのです。最終的に李氏が譲り日中韓は“悠久の歴史及び久遠の未来を共有”としましたが、あとで安倍さんは“中国国内で李さんの立場が危うくならないだろうか”と心配していました」
トランプ氏との会談でも、相手の立場に立っていた。
「貿易交渉では、日本の自動車産業が米国でいかに多くの雇用を創出しているかといったことを説き、日本との関係がトランプ政権にとって利益になると積極的にアピールしていました。まず相手にとってのメリットを示すことで、交渉を有利に進めたのです」(同)
〈有料記事【「安倍元首相」銃撃から3年 トランプが降参し、習近平がジョークを飛ばす…最側近記者や外交スピーチライターが明かす驚くべき「外交手腕」】では、“安倍首相に最も食い込んだ記者”として知られる元NHK解説主幹の岩田明子氏や、「外交スピーチライター」として各国に同行した元内閣官房参与の谷口智彦氏らをはじめ、安倍元首相に近かった関係者が実際に目撃した、その驚くべき「外交手腕」について5000字にわたってお伝え詳報している〉
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