「安倍元首相」銃撃から3年 かつてトランプも降参…石破政権が見習うべき、最側近記者らが目の当たりにした「安倍外交の秘訣」とは

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 7月8日、安倍晋三元首相が凶弾に倒れてから丸3年が経った。それに先んじ、6月29日に永田町の砂防会館で開かれた「第3回 安倍晋三元総理の志を継承する集い」では、石破茂首相(68)も登壇し、思い出を語ってみせたが、続いて登壇した岸文雄前首相の挨拶を聞くとそそくさと“早退”してしまった。かつての政敵である安倍陣営を前に気まずかったのだろうか。とはいえ、米国による自動車への追加関税をはじめ、日本の難局は厳しさを増すばかり。そうした今こそ、石破政権が見習うべき安倍首相の外交メソッドとは――。※本稿は「週刊新潮」2025年7月10日号掲載の特集記事【銃撃事件から3年 安倍晋三元首相が存命なら日本外交はどうなっていたか】の一部を抜粋/編集したものです。

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「あの時は正直負けたと思った。シンゾーの人柄に屈したんだ」

「私は就任以来、トランプ大統領と対面で、あるいは電話で会談する機会がございますが、その度にシンゾーがというお話を聞かないことはございません。日本にとってどれほど大きな財産であったかということは、私は身をもって感じておるところでございます」

 6月29日、永田町の砂防会館で開かれた「第3回 安倍晋三元総理の志を継承する集い」に登壇した石破茂首相は、故・安倍元首相の外交手腕をこのように評価してみせた。帰らぬ人となった安倍元首相の"財産"を惜しみたくなるのは、今の難局からして当然かもしれない。

「日本の自動車に25%の追加関税を課している米国のトランプ政権とは、赤澤亮正経済再生担当相が7回もの渡米を繰り返して交渉を続けています。6月中旬には石破首相もトランプ氏とカナダで30分、会談しましたが、見直しの言質などは取れなかった。しかも『集い』と同日放送の米テレビ番組で、トランプ氏は"日米の自動車の輸出入は不公平だ"と関税措置を続ける姿勢を改めて示しました。いまだに交渉の出口は見えません」(政治部記者)

 石破首相が現状お手上げの米国による自動車への追加関税を、一度は抑え込んだのが安倍元首相だった。元NHK解説主幹の岩田明子氏が語る。

「2019年9月に合意された日米貿易協定の交渉では、日本が米国の農産品への関税をTPP(環太平洋パートナーシップ協定)と同等にまで下げるなど受け入れ可能な条件で、トランプ氏に自動車の追加関税を見送らせました。一度はトランプ氏が“バカバカしい! ノーディール!”と叫んで交渉決裂を安倍さんに突きつけるなど緊迫した場面もありましたが、トランプ氏の娘婿・クシュナー氏に取りなしてもらい会談を再開させた。鍔迫り合いの熾烈な交渉で、トランプ氏はあとから“あの時は正直負けたと思った。シンゾーの人柄に屈したんだ”と振り返っています」

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