就職人気ランキング100位から「テレビ局」消滅 深刻なのはフジテレビだけではない

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 タレント・中居正広氏の「性暴力問題」発覚以来、激震が収まらないフジテレビ。6月25日に開かれた株主総会は何とか乗り切ったが、信頼回復への道は遠い。

 だが、信頼を失っているテレビ局はフジテレビだけではない。かつては若者の憧れの職場だったテレビ局は、就職人気ランキング100傑から姿を消して久しいのである。元NHKアナウンサー・今道琢也さんの著書『テレビが終わる日』から抜粋して紹介する(前後編記事の前編)。

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かつては「高嶺の花」だったが……

 私が学生だった頃、テレビ局は就職先として人気がありました。私の周りでもテレビ局にエントリーシートを送っている人がたくさんいましたし、採用試験の会場では、学内の顔見知りを何人も見かけました。

 かつて人気を博した就活本に、「業界別カイシャ・ミシュラン 会社図鑑!」(ダイヤモンド社)があります。業界別に各社の社風や現役社員の本音をまとめたもので、企業のリアルな姿が分かる本として学生に支持されていました。私が就職活動をしていたころの「業界別カイシャ・ミシュラン 会社図鑑! '99 地の巻」(オバタカズユキ・石原壮一郎著 ダイヤモンド社)を見ると、テレビ局のページには、

「就職内定という宝くじに当たれば日本一の給料とりになれる!!」

 という見出しが躍っています。

 これは、民放キー局のことを言っているのだと思いますが、民放キー局の場合、NHKよりもずっと採用人数が少なく、その分就職活動での競争も熾烈です。また、民放キー局の平均年収は、日本の上場企業の中でも最上位に位置していましたし、「内定=宝くじ当選」に例えられるのもあながち誇張ではなかったのでしょう。とりわけ、番組制作に関わる部署の人気は高かったはずです。

 では今、就職先としてのテレビ局の人気はどうなっているのでしょうか。

 企業の就職先としての人気度を測る資料の一つに、「就職人気企業ランキング」があります。出版社や就職情報サービス会社が、学生を対象にアンケートをとり、企業の人気度をランキング化したものです。ここでは、東洋経済新報社の「就職四季報総合版」(2015年版~2026/2027年版)に掲載されているランキングを元に、テレビ局の就職人気度の移り変わりを見てみましょう。

 まず2014年卒を見ると、14位のNHKを筆頭に、民放各社もキー局のほとんどが名を連ねています。50位以内に限ってみても、NHKのほか、フジテレビ、日本テレビと3社がランクインしており、テレビ局の人気がとても高かったことが分かります。

人気ランキングから業界ごと消滅

 このあと時間が経つにつれ、テレビ局の順位は大きく変動していきます。年を追うごとに順位は下がり、2017年卒、2018年卒の調査では、辛うじてNHKだけが50位圏内に入りました。とはいえ、この時点では民放数社も100位圏内に入っていました。

 ところが、その後もテレビ業界の人気下落は止まらず、2019年卒のランキングでは、トップのNHKでも66位に後退し、すべてのテレビ局が50位圏内から消えてしまいました。2021年卒の調査では幾分盛り返しましたが、退潮傾向は止められず、2022年卒では再び全社が50位圏外。それでもこの年は、なんとか4社が100位圏内に踏みとどまっていました。

 しかし、2023年卒の調査では、ついに全社が100位圏外に去ってしまいます。続く、2024年卒、2025年卒の調査でも、100位以内にランクインしたテレビ局は1社もありません。3年連続、1社もランクインしていないのですから、テレビ局の退潮傾向は、もはや一過性のものではないということでしょう。

 ちなみに、2014年卒の調査で14位につけていたNHKは、2025年卒の調査では、なんと195位まで後退しています。200位圏内ですら危うい状況です。少し前まで、テレビ局各社が上位にひしめき合っていたのが嘘のようです。

「就職人気企業ランキング」は、他の媒体でも発表されているのでいくつか調べてみましたが、程度の差はあれ、昔に比べてテレビ局の順位が大きく後退しているのは同じです。

 例えば、文化放送キャリアパートナーズが実施する「就職ブランドランキング調査(前半・総合)」によれば、「2014年入社希望者」の調査では、上位100位以内に、NHKと在京民放5社のすべてがランクインしていました。この時のトップは18位のフジテレビで、NHKが20位で続いています。この調査からも、テレビ局の人気が高かったことが分かります。

 ところが、それから10年余り経った「2025年入社希望者」の調査では、上位100位以内にテレビ局は1社もランクインしていません。全社が圏外となってしまったのです。これは、「就職四季報総合版」の結果と同じ傾向です。あまりの落差に驚くほかありません。

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 人気急落はなぜ起きたのか。後編で詳しく見る通り、今でもテレビ局の待遇は決して悪くない。平均年収が1000万円超の局は珍しくないのだ。

 後編【「平均年収1000万円以上!」でも若者がテレビ局を目指さない理由】では、現在でも高水準の待遇を維持しているのにもかかわらず、テレビ局はなぜ若者に見捨てられたのか――今や人材の採用難が経営課題にさえなっているその「就職先としてのテレビ局離れ」の理由について解説する。

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