一体だれ向け? 着ぐるみキャラと“色物”気象予報士が存在感「夕方のお天気コーナー」のナゾ

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 世界一、キャラクタービジネスが盛んな国と言っても過言ではない日本。デザインがゆるいというか完成度が低いキャラでも、動きや性質が特徴的で面白ければ、人気が出て大儲け。いや、くさすつもりはない。私も好きなキャラがいる。果物の兄弟なのだが、グッズがもらえるキャンペーンに応募するために高価な果物を買うも、ちっとも当たらねえ。女性誌でこのキャラの人気便乗商法(おまけがキャラのグッズで、もはやそれがメイン)を見つけると、喜んで乗っかる。雑誌に1900円も出す。でも、満足。転売ヤーからは死んでも買わぬ。定価・自力で入手することに意義がある。つうことで、キャラクターって大事よね……。

 今回は、以前からずっと気になっていたお天気コーナーの話を。夕方の番組でキャラクターの着ぐるみが登場するのはなぜ? 私が観察している限りでは、日テレのそらジローがパイオニアだ。「木原さーん、そらジロー」の呼びかけもすっかり定着したし、視聴者の親子連れが参加して、テレビに映る仕組みを作ったのは日テレだ。TBSも局キャラのブーナちゃんが出張って、日テレの視聴者参加型をまねるようになった。

 着ぐるみキャラとして最も歴史が長いのは、フジテレビの黄金時代も現在の氷河期も支えてきたガチャピンだ(私とほぼ同い年)。夕方のお天気コーナーに出始めたのはここ5年くらいか。ガチャピンはフジテレビ内で会うと、ハイタッチとかしてくれるので結構うれしい。黄緑色の着ぐるみがちょっぴりくたびれているのもご愛敬、感慨深いものがある。

 あのNHKでも着ぐるみではないが、パペットの「しゅと犬くん」が登場しとる。

 夕方のお天気コーナーにキャラを登場させるのは、子ども向けを意識しているから? 年寄りか昼夜逆転のやさぐれた人しか見ていない気もする(超偏見)が、こぞってふわもこ横並びの謎。幼児を洗脳して青田買い? それとも意匠ビジネス狙いのたくましき商魂? それぞれの思惑を知りたいところだ。

 キャラはさておき、お天気コーナーを担う気象予報士の皆さんは、逆に特化・差別化が必須のようで。数が増えたからかな。前述のNHKの番組でしゅと犬くんを動かしながら気象情報を伝えるのが、気象予報士の黒田菜月。右手で実に器用にしゅと犬くんを演じながら、短時間で大量の情報を凝縮してお届けする姿にいつも感心している。

 そうそう、気象予報士のエンターテイナー化といえば、もう一人怪物がいる。テレ朝の二つの番組でお天気コーナーを担当する片岡信和だ。そもそも俳優で、個人的には東海テレビの昼ドラが記憶に濃い。「聖母・聖美(きよみ)物語」や「新・牡丹と薔薇」ね。それが今や! ストレッチを教示したり、あるいはピアノの弾き語りで気象情報をお届け、ねづっちよろしくなぞかけまでお披露目。完全に色物気象予報士として暗躍(褒めてる)。指をパチンと鳴らす昭和の色男っぽい芸風で、「とぼけたおじさんだらけの気象予報士業界」に、新しくたくましく根っこを張っている。

吉田 潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2025年7月3日号掲載

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