外国人タクシー運転手の「日本語能力要件」が緩くなる? 「走行ルートの指定をしてもおぼつかない可能性が」

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これまで合格者ゼロ

 国際交流基金などが主催する日本語能力試験では、

〈日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる〉

 というレベルの語学能力を「N4」としている。5段階の下から2番目だ。例えば、買い物を頼まれたら、その品名をきちんと理解できるぐらいの能力である。日本に来て半年ほどたてば合格できるというが、問題は、このレベルでタクシーの運転手が務まるかどうかだ。

 6月11日、政府は外国人労働者の「特定技能」の緩和について有識者会議を開いた。国土交通省担当の記者によれば、

「特定技能は一定の技能や日本語能力を持つ外国人に在留資格を与えるための制度ですが、この日の議題は、バス・タクシー運転者の日本語能力要件を緩くすることでした。現行で彼らに求められる日本語能力はN3以上。『日常的な会話をある程度理解できる』レベルです。ところが、これまで合格者が一人もいない。一方、わが国ではバスやタクシーの運転手の減少が加速しており、運行の維持が喫緊の課題なのです」

 タクシー運転手になるためには、前提として「二種免許」を保有していなくてはならない。外国人が日本でタクシー運転手になるのは簡単なことではないのだ。

「そこで政府は、まずN4での入国を認めて、その後にN3以上に合格したり、日本語サポーターを車内に置けばそのまま運転手になれる制度を検討しています。また離島などではN4のまま単独で運転できるようにもする方向です」(同)

「タクシー運転手にはコミュニケーション能力が必要」

 タクシー業界を所管する国交省に聞いてみると、

「まだ有識者会議の段階で、緩和が決まったわけではありません。そもそも、タクシーは二種免許などが必要な仕事ですから、N4であっても運転手としての能力は備わっているといえます」(物流・自動車局旅客課の担当者)

 だが、作家・志茂田景樹氏の次男で、タクシードライバーの下田大気(ひろき)氏(武蔵野市議会議員)が言うのだ。

「バスやトラックなら大丈夫かもしれませんが、タクシー運転手には一定のコミュニケーション能力が求められます。走行ルートの指定をしてもN4の日本語能力ではおぼつかないと思いますよ」

 タクシーの中で運転手さんと世間話、なんてこともできなくなるかもしれない。

週刊新潮 2025年6月26日号掲載

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