「1日36時間生活」でE判定から「東大理二類」に合格…プロ注目の「ミスターサブマリン2世」が明かす「考えが180度変わった」父からの助言

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野球も勉強もできる人がたくさんいることを知った

 晴れて東京大学理科二類に入学を果たした渡辺投手は、一時は「野球を続けるかどうか迷っていた」というが、少し遅めの4月半ばに歴史ある野球部の門を叩き、競技を続ける決断を下す。

「実際に入部してみると、僕が思い描いたよりも野球部のレベルは格段に高く、勉強も野球もできる人が世の中にたくさんいることを知り、とにかく驚かされました」

 そのように話す渡辺投手は、大学入学後には本格的にアンダースロー転向を決断。「父と同じフォームなので、色々なことを言われるだろうと思っていた」という本人の予想通り、“元プロ野球選手の2世”として周囲の視線を感じる場面も少なくなかったそうだが、そのプレッシャーをものともせずに、己の実力を高めていった。

「最初は正直に言って、『高校まで勉強しかしてこなかったような選手が、“野球エリート”に勝てるんだろうか?』と後ろ向きになることもありました。でも、チームメイトと全力で練習に取り組んでいるうちに徐々にみんなのやる気に刺激を受けて、勝利に対する強い気持ちが芽生えてきたんです。確かに持ち併せた野球のセンスは他大の選手に及びませんが、僕も彼らと同じように野球が好きで、大学までずっと頑張ってきた。今は『野球への思いを全力でぶつけて勝ちにいこう』という思いが、試合に臨む原動力になっています」

父・俊介氏のアドバイスで「180度考えが変わった」

 アンダースローに転向した当初は「遅めの反抗期」の真っ只中だったこともあり、独学で練習を続けていた渡辺投手が父のアドバイスを請うたのは、春のリーグ戦でデビューを飾った2年生の夏のことだった。父から身体の使い方などの「自分の考えが180度変わるような助言」を受け入れ、球速130キロ台ながらも、打者がギリギリまで球種を判断できないようにする現在の投球スタイルに辿り着いた。

 さらには、立教大でプレーしていた颯投手(現、横浜DeNA)の配球を参考にしながら、投球術にも磨きをかけ、3年の秋には初勝利をマーク。今年春のリーグ戦で見せた安定した投球が認められて、21日から行われる大学日本代表の合宿招集も決まった。

「僕は勉強が得意だったおかげで、東京六大学でプレーさせてもらえているので、これまでプロを目指してきた選手たちの努力に自分が追いつけているのか。日々葛藤しながら野球に取り組んでいます」と揺れ動く思いを口にするが、その右腕に期待を寄せる者は多く、今秋のドラフト指名候補にも挙げられている。

「本気でプロを目指している人たちの覚悟を近くで見ているので、これまで勉強中心でやってきた自分が、果たしてどのくらい追いつけているのか不安もありますが、今の立場をもらえたことに感謝しながら、全力で取り組んでいきたいです」

 堅忍不抜の精神で道を切り拓いてきた右腕の挑戦を楽しみに見守りたい。

第1回【「ミスターサブマリン」を父に持つ東大野球部エース…渡辺向輝投手が「偏差値74」難関中学で“落ちこぼれて”しまった理由】では、中学受験を突破し、難関中高一貫校に入学した渡辺投手が、どのような学校生活を過ごし、成績不振に陥ってしまったのか、などについて語っている。

ライター・白鳥純一

デイリー新潮編集部

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