「どけよコラ!」「邪魔だ!」 “撮り鉄”が一般人に罵声を浴びせるのには“理由”があった…トラブルが頻発する「お立ち台」とは

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生成AIで十分?

 A氏は、そういった写真の楽しみ方を決して否定しないという。しかし、鉄道写真はもう少しいろいろな楽しみ方があっていいのでは、と提言する。

「例えば、列車に架線がかかっていたらダメだとか、人物や障害物が写っていたら良くない、などと考える撮り鉄はたくさんいます。しかし、界隈のルールから外れた写真ほど、良い写真だったりするんですよ。撮り鉄ももっといろいろな写真を見るなどして、視野を広げて欲しいなと思っています。

 鉄道は被写体として魅力的だと思います。しかし、私個人としては、撮り鉄は周りに迷惑をかけながら、鉄道の魅力を発揮しきれてない写真を撮影してしまっているように思えます。そこだけが非常に残念ですね」

 手本通りの画像はもはやAIで事足りる時代になった。撮り鉄が嫌悪する、写真に写り込んだ人やトラックもAIで消すことができる。空がどんなに曇っていたって、青空に変えることもできてしまう。手本通りに撮ろうと思えばいくらでも撮れてしまう時代だからこそ、写真の創造性こそが評価されるべきであろう。

機材でマウントを取ってくる

 撮り鉄は鉄道会社からは厄介者扱いされる存在だが、カメラメーカーにとってはお得意様といわれている。高級な機材を惜しげなく買ってくれるからだ。定番撮影地に行けば、高価な望遠レンズ、高価なカメラ、高価で堅牢な三脚を有している撮り鉄を多数見かける。プロの写真家を超える機材をそろえている撮り鉄は、ごく普通にいる。

「撮り鉄は、私などよりもはるかに高い機材を持っている人が多い。100万円もするような望遠レンズを何本も買っているわけですからね。しかし、撮り鉄の話を聞いたことがあるのですが、機材自慢をしている人が多く見られます。そんなことでマウントとっているのが、ちょっと悲しくなってしまいました」

 せっかく高級な機材を買っているのですから、その機材をもっと生かしていただきたいとA氏は指摘する。高級な機材で、手本通りの写真をいかに撮るかどうかのマウント合戦になってしまっている。鉄道雑誌なども、こうした意識を変えるように働きかけるべきではないだろうか。

 繰り返すようだが、鉄道は被写体として魅力的なものだし、四季折々の風景のなかを走る列車をとらえた鉄道写真は旅情を感じさせてくれる。素晴らしい趣味だからこそ、撮り鉄は、あいつはマナーが悪いが自分はいいと、他人事として見なすべきではない。お互いにマナーを啓発し合うような関係であってほしいものである。

取材・文=宮原多可志

デイリー新潮編集部

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