160キロの剛速球を封じた「佐々木朗希」はメジャーで成功するか…“ガラスのエース”にロッテOB投手が「マイナー行き」を勧める理由

スポーツ 野球

  • ブックマーク

投げない投手が増加中

「長い投手人生を歩むためには痛みや不調と上手に付き合っていく必要があります。ところが佐々木投手はロッテの5年間で一度も規定投球回数に達しませんでした。あまりにも大切にされすぎて、常にケガをする手前で投球を回避させられてきたのです。これではケガや不調とうまく付き合うという経験が得られなくて当たり前でしょう。自分の限界を知り、体の違和感をごまかしながらローテーションを守り切る方法を学べなかったわけです」(同・前田氏)

 前田氏によると、「無理するな」という指導が続いてしまったのは、佐々木という稀有なピッチャーだからこそ起きた問題ではある。だが、その一方で、最近ではプロ野球の現場でも増えている現象でもあるという。

「プロ野球の場合は指導者ではなく、選手に増えている現象です。肩を消耗しないという理由から、春のキャンプでは2日連続で投げない投手も増えてきました。僕もキャンプ地で取材したのですが、必ずしも首脳陣は『投げるな』と言っているわけではないです。むしろ時と場合によっては『たくさん投げ込んでほしい』と投手コーチは心の中では思っている。でも言えない。投げろと指示して肩が壊れたら、『責任を取ってください』と言われるのが怖いからです」(同・前田氏)

150球を投げ込むメリット

 だがピッチング練習の原点を考えると、前田氏は「試合で100球を投げるためには、練習で120球から150球は投げる必要があります」と言う。

「練習と試合では本気度や緊張感が全く違います。そのため練習は試合の時より球数を増やす必要があります。徹底的に投げ込むメリットはあります。試合で100球を投げるプロセスを体験するためには、100球以上を実際に投げるしかありません。さらに投球練習ではバッターがいないので、投球動作を延々と反復することになります。こうすることで正しいフォームを体にしみ込ませることができるのです」

 こうした練習法は、佐々木の“復活”を考える上でも参考になる。アメリカでも「佐々木はマイナーに落とすべきか」という報道やSNS上での議論が盛んだ。

「絶対に佐々木投手はマイナーに行くべきだと思います。僕も3Aで投げた経験がありますが、非常に苛酷な環境です。そして、だからこそ、マイナーの経験は佐々木投手の殻を打ち破るだけの実りをもたらす可能性があります。何しろ自分の限界を見極めるには最適な環境ですから」(同・前田氏)

意外に肩は壊れない

 前田氏は「肩は消耗品であることは紛れもない事実ですが、そう簡単に肩は壊れないということもまた事実なんです」と笑う。

 少年野球で球数制限は絶対に必要だとしても、プロの世界なら負荷をかける練習にも意味はある。最先端のスポーツ医学を上手に活用しながら、かつての練習法のメリットも取り入れるべきではないか──前田氏は、そう提案する。

 第1回【佐々木朗希「60日間の負傷者リスト」入りで“今季絶望”か…ロッテOB投手は「新人賞どころか1シーズン投げ切れるか不安だった」】では、菅野智之、千賀滉大、山本由伸の3人に比べ、佐々木には何が足りないか、詳細に報じている──。

註:Dodgers Pitching Coach Reveals Why Roki Sasaki Isn’t Throwing 100 MPH Anymore(Dodgers Nation:5月9日)

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。