トランプが「ノーベル平和賞」を受賞したらどうなるか プーチンへの不可解な信頼の裏にあるもの…ウクライナ危機の現在地

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トランプとプーチンの「不可解な信頼」

 トランプは、プーチン大統領に対しては「信頼できる」と語っています。ゼレンスキー大統領との対面の際も、「彼は私のことを尊敬している。一緒に苦難を乗り越えた」「バイデンやオバマだったら合意には至らないだろう(が、私は違う)」と述べています。

 どうしてそこまでプーチンのロシアを信じられるのでしょうか。トランプは第一次政権のときも、自分はプーチン、金正恩といった独裁者とうまく付き合えるのだとアピールしていました。特にプーチンに対しては、どういうわけか信頼を寄せています。

 トランプはかつて、自身の事業が傾いたときに、ドイツ銀行を通じてロシアからの資金提供を受けたのではないかと言われています。さらには2016年の大統領選挙の際に、CIAやFBIの捜査によって、ロシアに協力を仰いだ可能性が指摘されました。

 たとえばロシアに、対立候補だったヒラリー・クリントン氏のメールをハッキングするよう要望するような発言をしていました。実際に、ロシア側とトランプが接触していたという報道もあり、トランプとロシアが「共謀していたのではないか」という疑惑にまで発展し、捜査対象となっています。いわゆる「ロシアゲート」事件です。

 さらにそれに関する捜査をトランプが妨害したとして弾劾裁判が検討されるなど、議会やCIA、FBIなども巻き込んでアメリカは揺れに揺れました。結局、最終的な結論として、この事件の捜査にあたったモラー特別検察官は「共謀の証拠なし」としたのです。

 しかしトランプのCIA、FBIなどへの恨みは消えず、これがアメリカの政府機関の縮小の動機の一つと言われています。「FBI解体」を持論とするカシュ・パテル 氏をFBI長官に任命したのも、このときの恨みによるものでしょう。個人的な恨みが、政府機関のあり方にまで影響するとは驚くべきことです。

「ウクライナ和平のイニシアチブ」の実効性

 4月初旬、トランプは突如として「ウクライナ和平のイニシアチブ」を発表しました。この提案は、ロシアが現在占領している地域を「特別管理区域」として国際監視下に置き、5年後に住民投票を実施するというものです。この提案はウクライナ側に大きな譲歩を求める内容でしたが、トランプは「これが最も現実的な解決策だ」と主張しました。

 ゼレンスキー大統領はこの提案に対して当初強く反発しましたが、4月中旬にはウクライナ東部で大規模なロシア軍の攻勢が始まり、状況は一層厳しくなりました。ロシア軍は北朝鮮からの兵力も加え、ハリコフ方面で大きく前進。ウクライナ軍は弾薬不足と兵力不足に直面し、一部地域で撤退を余儀なくされています。

 この状況を受けて、ゼレンスキー大統領は苦渋の決断を下しました。「ウクライナ国民の命を最優先に考え」トランプの提案をベースに交渉を開始する用意があると表明したのです。これはウクライナ国内で大きな議論を引き起こし、一部の閣僚からは辞任の動きも出ています。

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