般若の“仮面女”が見る者を睨み付け…「宮崎勤」が拘置所で描いた“奇怪すぎる”イラスト、連続幼女殺人犯の獄中読書リスト
今から17年前の2008年6月、宮崎勤の死刑が執行された(享年45)。1988年から1989年にかけて宮崎は、埼玉、東京で4人の幼女を連続して誘拐し、殺害した。逮捕から既に36年が経ったが、その異様で劇場型の犯行は、いまなお人々の記憶に深く刻まれている。
その宮崎は、逮捕以来、死刑が執行された2008年まで19年間の長きに亘り、拘置所で生活した。その間、多量のイラストをノートに記していたことはあまり知られていない。そのイラストからは、彼の異常な心理状態が想起されるものも少なくない。
写真週刊誌「FOCUS」では、一審判決が出る前の1996年、そのイラストを入手し、専門家に取材してそこから見える彼のパーソナリティーを分析している。また、法廷での発言から、彼の精神状態についても考察している。
時代は平成から令和に移り変わっても、未だ幼女に対する痛ましい犯罪は後を絶たない。以下、当時の記事を再録し、希代の犯罪者の心の奥底にあったものとは何だったのか、猟奇犯罪者の“心の闇”を探ってみよう。
(以下は「FOCUS」1996年7月31日号記事を一部編集しました。年齢、肩書きなどは当時のままです)
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社会的な未熟
奇怪なイラストの数々がある。看護婦に見守られ、手足の障害をリハビリ治療している男に、不毛の惑星をフワフワ歩く宇宙飛行士、バネ仕掛けで道路を飛び跳ねるロボットと、般若の形相で睨み付ける女。
主題は一見、バラバラのようだが、つぶさに観察すれば、共通点を見つけることができる。どのイラストの登場人物も、地に足が付いていない。また、般若の絵以外は、中心人物に表情が描かれていない。
連続幼女誘拐殺人事件の犯人、宮崎勤(33)が描いたものだ。
逮捕されて7年。宮崎はずっとイラストを描き続けて来た。拘置所では大学ノートに描いた。そして法廷でも、常にボンヤリ頬杖をついて便箋に描いていた。
冒頭で述べたイラストは1989年、拘置所に移監された当初、宮崎が描いたものである。これを見た精神医学の専門家は、口を揃えて宮崎の異常性を指摘する。宮本忠雄・自治医科大学名誉教授によると、
「人物の顔を描いていない。顔は社会との接触の大切な部分で、それがないのは他者とのコミュニケーションを拒絶している。般若も顔ではない、仮面です。全体的に見て、社会的な未熟を感じる」
高橋紳吾・東邦大学講師も言う。
「共通しているのは、足を手で支えている。足がちゃんと着地していないのは、パーソナリティーが安定していないということ。それと浮遊している絵が多いのは、異常な性的欲望を示す。フロイトも言うように、飛ぶのは性夢なんです」
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