配信解禁で「トランプ」伝記映画が話題 訴訟不可避…ハリウッドがビビった“配給NG”作はなぜ公開されたのか

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 5月9日より、ドナルド・トランプ大統領の若き日を描いた映画「アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方」がAmazon Prime Videoで配信開始となり、日本でもじわじわと注目が集まっている。昨年、カンヌ映画祭でお披露目された際には、トランプが師事していたやり手弁護士ロイ・コーンの露骨な描写、最初の妻イヴァナへのレイプシーンなどが話題をさらった。にもかかわらず、本国アメリカでの興行は振るわず……。L.A.在住の映画ジャーナリスト・猿渡由紀氏のレポートをお届けする。

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トランプを演じたセバスチャン・スタンはオスカー主演男優部門にノミネート

 関税問題、自らの誕生日に合わせた軍事パレード、カリフォルニアへの海兵隊派遣。毎日のように、トランプはあいかわらずアメリカと世界を引っ掻き回している。

 トランプ第二政権が第一政権時よりもひどくなることは、就任前、元政治ジャーナリストのガブリエル・シャーマンが予測していたこと。長年トランプを取材してきた人の言葉だけに信憑性は十分だったが、残念ながら、彼は正しかった。

 そのシャーマンが脚本を執筆した映画「アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方」が最近、Amazonプライム・ビデオで配信開始となった。

 父に認められるビジネスマンになろうとする70年代と80年代の若き日に焦点を当てつつ、我々の知るトランプがどう形成されていったのかを見つめる伝記映画だ。彼がリアリティ番組「Apprentice」に出てセレブリティになり、ますますパーソナリティに磨きをかけていくよりも前の時代だが、その種はラストシーンにしっかり見受けられる。

 映画のお披露目は、昨年のカンヌ映画祭。トランプを演じたセバスチャン・スタンは主演男優部門、彼を導くやり手弁護士ロイ・コーンを演じたジェレミー・ストロングは助演男優部門で、今年のオスカーに候補入りした。

 しかしそうした評価とは裏腹に、興行的には振るわないどころか、昨年の大統領選挙には何の影響も与えなかった。どたばたの末、なんとか大統領選挙直前の10月という最高の公開日を確保したにもかかわらず、だ。

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