中日・川越誠司の“幻の逆転2ラン”に「またか」 過去には新庄監督も抗議…「疑惑のビデオ判定」トップ3を振り返る
5月27日のヤクルト対中日で、8回に中日・川越誠司が放った右翼ポール際への大飛球がリプレー検証でも覆らず、ファウルと判定され、“幻の逆転2ラン”となった。直後、井上一樹監督が退場覚悟でベンチを飛び出すシーンも見られ、リプレー映像の不完全さが改めて浮き彫りになった。そして、過去にも映像で検証しきれなかった“疑惑の判定”が何度かあった。【久保田龍雄/ライター】
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明らかな本塁打が“世紀の誤審”でなかったことに
決勝弾がリプレー検証でも「フェンスを越えていない」という判断から、三塁打に格下げされる“世紀の誤審”が起きたのが、2015年9月12日の阪神対広島である。
2対2の延長12回、広島は1死から7番・田中広輔が左中間に本塁打性の大飛球を打ち上げた。
センター・俊介がフェンスに激突しながら必死にグラブを差し出したが、打球はフェンスを越えたあと、グラウンドに跳ね返ってきた。
決勝本塁打と思われたが、判定はインプレー。打球の行方も見ずに全力疾走した田中は三塁でストップし、三塁打となった。
直後、緒方孝市監督が「本塁打ではないか」とビデオ判定を要求したが、判定は覆ることなく、試合は2対2の引き分けに終わった。
試合後、東利夫責任審判は「バックスクリーン方向からのリプレー映像を3回見直した結果、ラバー上部にあるフェンスにドンと当たって落ちたように見えた。3人で見て、越えていないという判断です」と説明したが、打球はフェンスからスタンドに向かって直角に張られて侵入防止策のワイヤに当たって跳ね返っており、明らかに本塁打だった。
審判団が見た映像では、侵入防止策は確認できず、それ以外の角度からの映像は準備されていなかった。侵入防止策という甲子園特有の構造を見誤ったことと「ワイヤに当たるはずがない」という思い込みが、誤審につながったようだ。
その後、広島側の確認要求に対し、NPBは誤審を認め、異例の謝罪を行ったが、すでに試合が成立していたため、三塁打が本塁打に訂正されることはなかった。
決勝弾と1勝が幻と消えた広島は、皮肉にも3位・阪神と0.5ゲーム差の4位に終わり、3年連続のクライマックス・シリーズ(CS)進出を逃す羽目に。ひとつの誤審が回りまわってCS進出チームを入れ替えてしまうという何ともあと味の悪い結果になった。
約20分にわたって「ファウル」「ホームラン」の堂々巡りが
この事例とは逆に、ファウルが誤審で決勝2ランになったのが、2018年6月22日のオリックス対ソフトバンクである。
3対3の延長10回、ソフトバンクは2死一塁で中村晃が右翼ポール際に大飛球を放つ。坂井遼太郎一塁塁審の判定は「ファウル!」。打った中村自身も「ファウルだと思っていた」と言うほど微妙な打球だったが、勝敗にかかわる重要な一打とあって、工藤公康監督はコーチ陣の進言を受けて、リクエストを要求した。
そして、リプレー検証後、なんと、判定は本塁打に覆る。結果的にこの2ランがモノを言って、ソフトバンクは5対3で勝利した。
一方、ファウルを確信していたオリックス・福良淳一監督は、当然収まらない。試合後、「誰が見てもファウル。しっかり見てくれよ!」と怒りをあらわにして、審判団に詰め寄った。長村裕之球団本部長も「リクエストで間違えたら意味がない」と不満をぶちまけた。
これに対し、審判団も「映像を見て確認した」と一歩も譲らず、約20分にわたって「ファウル」「ホームラン」の堂々巡りが続いた。
その後、球場の審判室で、福良監督、長村本部長も交えて、リプレー検証の再確認作業を行った結果、審判団は「当初はポールに(打球が)隠れたように見えたので本塁打としたが、あとで(コマ送りなどで)見たところポールの前に白い物が見えた。判定が正確ではなかった」(佐々木昌信責任審判)とようやく誤審を認めた。
だが、すでに試合は成立しているため、本塁打の記録は訂正できない。ファウルを本塁打にされて、試合にも負けたオリックスとしては当然納得できず、翌23日、NPBに対し、問題の延長10回2死一塁からの試合続行を要求したが、言い分が通ることはなかった。
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