【セ・パ交流戦】昨年までの通算打率歴代トップ「交流戦男」が阪神ファンを黙らせた“劇的逆転満塁弾”や流行語大賞の活躍など…交流戦でブレイクした選手列伝
今年で20回目を迎えたセ・パ交流戦。「日本シリーズ男」「オールスター男」の呼称同様、交流戦で大活躍した「交流戦男」も多く存在する。交流戦での大ブレイクをきっかけに一躍スターダムにのし上がったのが、広島時代の鈴木誠也(現・カブス)だ。【久保田龍雄/ライター】
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流行語大賞にもなった交流戦での“伝説”
2016年、4年目のレギュラー定着を目指す鈴木は、春季キャンプ中に右足を痛めて出遅れたものの、4月26日のヤクルト戦で満塁弾を含む2本塁打を放ち、存在をアピール。5月29日までの約1ヵ月で打率.286、6本塁打を記録し、背番号51にちなんだ“赤イチロー”の呼称もおなじみになった。
そして、交流戦の最終カードとなった6月17日からのオリックス3連戦で、伝説の扉がこじ開けられる。
17日の初戦、5番ライトで出場した鈴木は、4対4の延長12回無死二塁、比嘉幹貴から左翼席上段にサヨナラ2ランを放ち、チームの4連勝の立役者に。翌18日の2戦目も1対3と敗色濃厚の9回裏1死一、三塁、平野佳寿から左越えに起死回生の逆転サヨナラ3ラン。
緒方孝市監督も「誠也がまたデカい仕事をしてくれたね。いや、本当にね。今どきの言葉で言うなら、神ってるよな」と絶賛した。「神ってる」は、緒方監督の当時高校生の次女と小学生の長男が将棋やゲームの対戦時に使っていた賛辞だった。
さらにミラクルは続く。鈴木は19日の3戦目でも、4対4の8回無死、山崎福也から左翼上段のコンコース席に突き刺さる3戦連続の決勝アーチを放ち、お立ち台で3日連続の決まり文句「最高で~す!」を披露。球団が18日の逆転サヨナラ本塁打を記念して発売した618枚のTシャツもわずか1分で完売する人気ぶりだった。
21歳の交流戦男に引っ張られるように、チームはリーグ戦再開後も連勝を「11」まで伸ばし、9月10日に早々と25年ぶりの優勝を実現。鈴木の活躍やチームの快進撃の代名詞になった「神ってる」も、同年の「ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞になった。
「セ・リーグのピッチャーが合うんじゃないですか」
昨年まで交流戦歴代トップの通算打率.337(600打数以上)をマークしているのが、ロッテ・角中勝也だ。
レギュラー獲りを狙ったプロ6年目の2012年、4月中旬に1軍昇格した角中は、同21日の西武戦から自ら打点を挙げた試合でチームも13連勝と牽引車的存在となり、交流戦でも面白いように打ちまくる。
6月16日の阪神戦では、本塁打と二塁打2本の4打数3安打4打点を記録。試合は5対8で敗れ、不敗伝説は「13」でストップしたものの、翌17日の阪神戦でも4打数3安打と勢いは止まらない。交流戦最終試合となった同20日のヤクルト戦でも4打数3安打2打点と3試合連続猛打賞を記録し、見事交流戦首位打者(.349)に輝いた。
「短期的なものなので、まだまだです」と謙遜した25歳は、交流戦後も活躍を続け、同年は独立リーグ出身選手では初のオールスター出場と規定打席到達を実現。打率.312で首位打者を獲得した。
その後も角中は、交流戦で無類の勝負強さを発揮する。2015年6月2日の阪神戦では、2対3の9回2死満塁、呉昇桓からカウント1-2と追い込まれながらも、「つないでくれた人のためにも打たなければいけない」とファウルで9球も粘り、右越えに劇的な逆転満塁弾を放った。
7回途中3失点のエース・涌井秀章の負けを消す値千金の一発に、角中は「いつもワクさんに『オレが投げるときにお前打たんな』と言われる。本当は投げているときに打てれば良かったけど、負けが消せて良かった」と安堵の表情になった。
一方、勝利まで「あと1球」から試合をひっくり返された阪神ファンは、テレビの実況アナが「嘘だろう?嘘だろう?」と声を裏返して叫んでいたシーンとともに、この大暗転劇を苦い思い出として覚えているはずだ。
昨年5月28日のヤクルト戦で3回に交流戦通算10号となる決勝2ランを放ち、セ・リーグ全6球団から本塁打を記録した角中は「セ・リーグのピッチャーが合うんじゃないですか」と冗談交じりにコメントしている。
また、昨年は、楽天・渡辺佳明が交流戦で48打数17安打の打率.354と打ちまくり、もう一人の交流戦男・小郷裕哉とともにチームの交流戦Vに貢献。渡辺は今年6月4日のDeNA戦でも4年ぶりの4打数4安打を記録し、今季は交流戦まで打率1割4分台と低空飛行だった小郷も同日のDeNA戦で待望のシーズン1号を放った。
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