ロスで移民政策への抗議デモが激化も…トランプ政権が「ハーバード大学」を弾圧しても支持を訴えるデモが広がらないのはナゼか

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 現地時間の6月6日、アメリカ政府の移民税関捜査局(ICE)はロサンゼルスで大規模な移民の一斉摘発を実施した。一部報道によると45人が逮捕されたといい、これに抗議する人々の一部が暴徒化。トランプ大統領は州知事や市長の反対を無視して州兵や海兵隊を現場に派遣することを決めた。抗議活動の参加者は徹底抗戦の構えを見せて混乱は収まらず、10日にはロス中心部の一部地域で夜間外出禁止令が発令され、これに違反した200人以上が逮捕されたという。

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 トランプ大統領の重要政策である“不法移民の排斥”に反対する当事者や関係者が団結し、激しい抗議デモを繰り広げている。

 同じようにトランプ大統領から激しく“弾圧”されているにもかかわらず、アメリカ国民の間で共闘や連携の動きが見られない“被害者”がいるのをご存知だろうか。

 それはアメリカの名門大学であるハーバード大学だ。トランプ大統領が目の敵とし、様々な圧力を加えて世界各国の注目を集めてきた。担当記者が言う。

「トランプ政権は3月31日、ハーバード大に対する約90億ドル(約1兆3500億円)に及ぶ助成金や契約などを見直す方針を発表して国内外に衝撃を与えました。ハーバードではイスラエルがガザ地区での攻撃を続けていることに抗議するデモが盛んでした。これをトランプ政権は『キャンパスでの反ユダヤ的差別から学生を守れていない』と批判し、大学の財政を干上がらせる手に出たのです」

 ハーバード大は4月、トランプ政権による助成金凍結の取り消しを求め、連邦裁判所に提訴した。政権の圧力に屈しない態度を鮮明にしたと言えるだろう。

孤軍奮闘のハーバード大

「SNSなどを中心とする日本のネット論壇でも、ハーバードとトランプ政権の対立は高い関心事です。ネトウヨやネトサヨなど投稿者の思想的な立ち位置とは関係なく、トランプ政権の横暴を批判し、ハーバードを応援する意見が目立ちます。ただし状況は激しく動いています。例えばトランプ大統領は6月4日、ハーバードで新規留学生の入国を一次停止する文書にサインしました。ところが5日に連邦地裁が文書の効力を一時的に差し止める判決を下したのです。そのため国務省がビザ発給を再開したようです。状況は刻々と変わり、まさに予断を許しません」(同・記者)

 いずれにせよ、アメリカ国内ではハーバードを守るための大規模なデモは起きていない。不法移民の逮捕に反対するデモとは対照的だ。ハーバードは孤軍奮闘している印象だが、なぜアメリカ社会は名門大学に“冷淡”なのだろうか。

 評論家の古谷経衡氏は、まず「トランプ政権がハーバードに圧力をかけているのは看過できない問題ですし、長期的に見て国際社会におけるアメリカの信用を低下させるのは間違いありません」と指摘する。

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