もし“廃部”なら日本柔道界に大打撃 「国士舘大学」柔道部員の大麻事件が左右する勢力図
世界選手権の最中に
柔道世界選手権がハンガリー・ブダペストで開催中の16日、日本柔道界に激震が走った――。
【写真】父・仁氏も国士舘大学出身で金メダル!! パリ五輪で混合団体銀メダルをとった国士舘大学の斉藤立の戦いぶり
大学柔道界の名門・国士舘大学の複数の部員が大麻を使用した疑いが強まったとして、警視庁町田署が麻薬取締法違反(使用)容疑で、東京都町田市の同大キャンパス内にある学生寮を捜索したことを各メディアが報じたのだ。今月14日に町田署に同大から「柔道部員6人が大麻の使用を認め、このうち数人から大麻所持の申告があった」と相談が寄せられたという。
6人は1、2年生で、同署の事情聴取に、いずれも寮内の自室などで大麻を使用したことを認め、「高校時代の同級生から買った」と入手ルートまで告白している部員もいる。さらに、一部の部員の尿からは大麻成分を検出。同署は同法違反容疑での立件を視野に調べるというが、大学側の対応は早く、事が公になる前の14日付で同部に活動停止処分を下した。
また、16日に学内に対策本部を設置。田原淳子学長名で「警察の捜査に全面的に協力するとともに、学内調査を実施し、厳正に対処します」とのコメントを発表した。
「国士大は今月末に日本武道館で開催される大学柔道の団体日本一決定戦『全日本学生柔道優勝大会』に出場予定でした。23年以来、2年ぶり8度目の日本一を目指していましたが、この件で出場できなくなりました。短期間で活動休止処分が解除されるはずがなく、今後、就職が内定した部員、さらには、来年度に入部予定だった高校生への影響が懸念されます」(スポーツ紙記者)
同大柔道部はこれまで、ロサンゼルス、ソウル五輪で金メダル連覇した故・斉藤仁さん、アテネの金メダリストで、柔道男子日本代表の鈴木桂治監督(45)、仁さんの息子でパリの混合団体銀メダリストの立さん(23)ら、8人の五輪選手を輩出した名門だが、これまで、OBが不祥事を起こし、部の看板に“泥”を塗ったことはあった。
「アテネ・北京を連覇した内柴正人氏(47)は、コーチを務めていた大学柔道部の女子部員に対する準強姦罪で逮捕・起訴され、13年2月に懲役5年の実刑判決を受け服役しました。バルセロナ代表の丸山顕志被告(59)は、暗号資産の共同購入を持ちかけて千葉県内の女性から現金4000万円をだまし取ったとして詐欺罪で逮捕・起訴。今年3月に懲役4年(求刑6年)の実刑判決を言い渡されています」(全国紙社会部記者)
国士舘の不祥事発覚前には、全国大会で優勝経験もある天理大ラグビー部の寮で大麻を所持したなどとして、麻薬取締法違反容疑で部員2人が逮捕されたばかり。相次ぐ大学スポーツ界の薬物事件は大きな波紋を広げている。
柔道部はどうなる
そもそも、大学スポーツと大麻といえば、あの大学の大麻事件の結末は衝撃的だった。
「23年8月、日本大学アメリカンフットボール部(通称・日大フェニックス)の部員が覚醒剤取締法違反(所持)と大麻取締法違反(同)の疑いで逮捕されたのをきっかけに、部内で薬物が蔓延していることが発覚しました。ただでさえ、同部は18年5月の試合中の“悪質タックル問題”の余波もあり、翌年の受験者が激減するなど、大学側に多大な損害を与えていました。そうした経緯から、24年1月、フェニックスが廃部したことを大学側が正式に発表。84年の歴史に幕を閉じています」(同)
このような前例があるだけに、国士舘大学も名門柔道部の存続が危惧されるという。
「日大との大きな違いは、当時の日大は、大学の上層部が、なんとかして内々に問題の収束を図ろうとしていたが、結局、事件化してしまったことです。それに対して、国士舘は大学側が積極的に警察に対して捜査協力しています。同部に対し、かなり厳しい処分を下す意思表示だと思われる」(前出・スポーツ紙記者)
大学を代表する名門運動部の廃部――大学側には相当な覚悟と決断がいるのだろうと考えられるが、実態はそうでもないらしい。というのも、いくら五輪選手を輩出し、団体戦で日本一を獲得しても、大学に対する貢献度はそれほどでもない、というのだ。
「今や、大学の部活で受験者数アップに宣伝効果があるスポーツイベントといえば、正月の『箱根駅伝』がダントツです。花形スポーツとされる野球やラグビーですら、正直、そこまでの宣伝効果はありません。ましてや柔道となれば、その競技に関わっている人は関心が高いかもしれませんが、一般の受験生はまったく興味がありません。国士舘の柔道部は93人の部員を抱える大所帯。その部員たちを守るためにも、廃部が現実味を帯びればOB会や関係者は大学に対して猛烈に抵抗することになるでしょうが、どこまで効果があるのか……」(大手予備校のベテラン職員)
[1/2ページ]