卒業以来まったく縁がなかった母校で「超有名人」が生まれたら サッカー日本代表が“後輩”になって盛り上がる母校愛もある

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ワシが育てた

 他には、2015年、イスラム国(ISIS)の影響を受けた中3の男子生徒が我が母校に忍び込んだ件もあった。敷地内で飼っていたヤギを殺し、人を殺す練習をしていたのだという。警官が近くをパトロールしていたため、バールで虐待されるヤギの鳴き声を聞き、ただごとではないと感じ敷地内に入り建造物侵入の疑いで逮捕した。この学校に侵入したということは、もしかしたら卒業生かもしれない。

 無論、この2件をもって同級生が連絡を取り合い、同窓会を開くということにはならなかった。

 だが、鷺沼小学校の場合はもしかしたら、2026年のサッカーW杯北中米大会の際に、同級生の実家の居酒屋でパブリックビューイングを開催する流れなども生まれるかもしれない。ハルコにしても、知り合いに今度声を掛けてみると言っていた。そうなったらなったで久々の再会は嬉しいことだし、ならなかったとしても、ハルコと一緒に鷺沼で試合観戦をしたら客同士盛り上がるはずだ。

 オリンピックや大相撲の千秋楽では、親や兄弟も含めた地元の人々が公民館等に集って出身選手・力士の応援をする様子がテレビで中継される。当然、鷺沼でもそのようなことはあるだろう。

 あそこまでの偉人を地元の公立小学校が輩出した場合、街の人々は勝手に「ワシが育てた」的気持ちになり、よりアツく応援したくなるのである。郷土愛・母校愛ってものはこうしたことからも生まれるものなのだ。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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