弁当、カレーまで苦境… 一方で恩恵も?調査会社レポートが示すコメ高騰の波紋

国内 社会

  • ブックマーク

弁当製造業やカレー店にも苦境が

 影響はコメを作る農家や販売する米屋にとどまらず、コメを使って商売をする事業者にも広がっている。

 東京商工リサーチが全国の主な弁当製造業227社の売上高を調べたところ、2022年に8,425億円だった売上は2024年には9,386億円まで伸びた。ところが利益は2022年の90億8,300万円、2023年の106億8,600万円から、2024年には72億5,400万円へと大きく減少。価格転嫁の値上げや弁当など高付加価値商品の開発など企業努力を続けているものの、〈コメなど食材価格の高騰や製造コストの上昇は値上げ分を上回っているようだ〉と東京商工リサーチは指摘する。

 都心などでは店内ランチが1,000円超えも珍しくない今、弁当は「割安感」が売りだった。だが、駅弁などを除けば「900円の壁」が一つのボーダーとされる、そこを超えられるかが課題に。この壁について東京商工リサーチは〈度重なる値上げにより、(割安感による人気の)傾向が限界を迎えているかもしれない〉としている。

 帝国データバンクが注目したのはカレー店だ。2024年度のインド料理店などを含むカレー店の倒産(負債1,000万円以上)は13件と、前年度の12件に引き続く高水準で、過去最多を更新した6月5日に発表した。〈個人営業など小規模店の廃業や閉店を含めると、実際にはさらに多くのカレー店が市場から撤退したとみられる〉としている。

 もちろん、コロナ禍以降のデリバリーやテイクアウト需要が落ち着き、他業態との競争が再燃したことも要因に挙げられるが、〈これまで安定的に安値で入手できたコメ価格が急上昇するなど、原材料高〉が中小カレー店に大きな影響を及ぼしたという。

 家庭で調理する際に必要な原材料や光熱費などの価格を基に、食卓に与える影響を可視化した同社の「カレーライス物価」によれば、2024年度は1食あたり365円となり、過去10年で最高を記録。なかでもライスの価格は、前年度の90円から131円へと急騰し、値上がり分の約4分の3をコメが占めていた。

パン屋の倒産は減少

 コメ高騰に苦難する業界が多い一方で、パン屋の倒産が急減したことが東京商工リサーチの調べで分かった。今年1~4月の倒産は7件で、前年同期の13件からほぼ半減。もともと高級パンブームの終焉や小麦粉価格の上昇で苦戦していたが、〈高騰するコメから、家計防衛のためパン需要が盛り返した可能性もある〉(5月11日)と分析している。

 高級パン人気の沈静化に加え、小麦価格や光熱費の上昇も重なり、2024年の倒産は31件と過去20年で2番目の多さとなったが、コメの高騰を受けて状況は一変したという。東京商工リサーチは〈政府備蓄米の放出はあるが、しばらくコメ価格が元に戻ることは期待できず、パン屋のチャンスは続く〉とみている。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。