巨大企業でも45歳を過ぎると肩たたき…世界最低レベルの少子化、韓国で「週4.5日制」は実現できるのか
週4日制を試験的に導入
ただ、韓国経済界では実際に週4日制を試験的に導入し、成功を収めている事例が出始めている。AI時代を見据えて勤務時間を減らすことで創意性、生産性、集中力が高まることを期待し、半導体大手のサムスン電子、SKハイニックスなどが月に1回の頻度で週4日勤務を試験導入している。
また、大手自動ドアメーカーが一部週4日制を導入したところ、採用希望者が殺到し競争率が100倍に跳ね上がった。また、大手大学病院でも看護業務に週4日制を導入したところ離職率が激減したという。
実は、日本でも週4日制の導入は、大手企業の間で始まっている。SOMPOひまわり生命は仕事と育児・介護の両立支援のため希望者は給与2割減を条件に週休3日制を選択できる。また、ユニクロは週の合計が40時間労働になるよう1日10時間、週4日勤務を運行中。
味の素は60歳から65歳の再雇用社員を対象に水曜、土曜、日曜の完全週休3日制を採用している。このように労働時間の見直しは世界的な広がりを見せている。しかし、労働時間の短縮が困難な職場が多数あることも事実だ。
「公務員や資本的に余裕のある大手企業は導入に前向きですが、学校など教育現場や小規模個人商店への導入は現実的な壁が高い。李大統領は定年を現在の60歳から65歳にまで段階的に延長することも公約にしています。
しかし、韓国の巨大企業は賃金水準の高い45歳を過ぎると肩たたきが始まり、退職を余儀なくされるケースが後を絶ちません。職を失った早期退職者が専門技術や資金が少なくて済むフライドチキン店を次々と開業して過当競争となり、結果、破産に追い込まれるなど社会問題に発展しています」(韓国の企業コンサルタント)
中小企業や非正規職労働者層、製造業、流通業、サービス業で週4.5制の導入が進めば、追加人員負担が発生するという懸念は強く、「そもそも韓国にそこまでの経済力はない」(現地の経済部記者)といったシビアな指摘も。
今や世界最先端を走るネット社会となった韓国だが、一方で2024年(暫定)の出生率は0.75と世界最低レベルの少子化が悩みの種。大企業至上主義による熾烈な競争も、就職難を深刻化させている。その結果、流通やサービス現場における人手不足が激化しており無人のカフェ、雑貨店があちこちにオープンしている。労働時間短縮制の議論よりも安心して子どもを産める優しい社会にすることが先決なのだろうが……。
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