「もう一度、親方をやらせてあげたかった」 デーブ・スペクター氏が見た「白鵬騒動」 相撲の五輪競技入りは「難しいかも」

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優等生ばかりではつまらない

「今はモンゴル出身の力士が多いですが、かつてハワイ出身の力士が大勢いたことがありました。あの頃、大相撲を盛り上げ、人気も実力もあった小錦は、横綱にはなれなかった。相撲協会は“相撲の志”とかこだわりを口にする割りに、若手を集められないし、育成もできなかった。だから外国人が大勢来たわけですが、横綱や親方にはなってほしくないんです。そんなに外国出身力士が嫌なら、日本人以外の力士は入れないとルールを作ったほうがいいと思います」

 確かにそうだ。

「白鵬は15歳の時から日本にいて、帰化もしたわけです。奥さんも日本人。それ以上何を求めるんでしょうか。確かにガッツポーズとか(優勝インタビュー後に客席に呼びかけた)三本締めとか、横綱として相応しくないと言われたこともやりましたけど、面白くしなければ大相撲を見る人は減っていくと思います。プロスポーツにはエンターテインメントが必要で、亡くなった長嶋茂雄さんと同じですよ。日本では今、メジャーリーグが人気ですが、それだって大谷翔平のおかげでにわかファンが増えたから。朝青龍だって不良っぽいから面白かった。優等生ばかりではつまらないですよ。若貴人気の頃だって、相撲だけでなく女性問題とか親子の確執なんかもあったじゃないですか。純粋に相撲だけではあそこまでの人気にはならなかったと思います」

 その若乃花、貴乃花も相撲協会を去っている。

オリンピックは難しい

「貴乃花も親方の時に相撲協会を革新しようとしました。タニマチでなくサポーター制度を取り入れようとしたりね。でも、新鮮なことをやろうとすると、実績のある人でも追い出してしまう。すべての原因は相撲協会にたどり着いてしまうように思います。窮屈な世界なんでしょうね。僕は相撲が大好きで、テレビでもよく見るけど、国技館にたまに行くと空気が開放的じゃない。“イッツ・ア・相撲ワールド”なんです。だから相撲協会に嫌気がさして白鵬が辞めるのは当然でしょう。40歳という節目でもあるしね」

 協会を去った白鵬氏は今後、“外の立場から相撲の発展に力を注ぐ”としている。それが「世界相撲グランドスラム」であり、相撲のオリンピック競技化という。

「彼が15年も前から開催している少年相撲の国際親善大会『白鵬杯』は上手くいっています。新横綱の大の里もこの大会の優勝者ですから。だからといって、協会を離れてしまうとハコ(競技場)の確保も難しいでしょう。海外でデモンストレーションを行うにも土俵を作るのは大変だし、まわしをしないと画にならない。チョンマゲだって難しいでしょう。ましてやオリンピックは、東京オリンピックですら公式競技にはできなかったのですから、今後どの大会で相撲ができるのか。2028年のロサンゼルスオリンピックでは野球が復活しますが、それは野球の本場であるロスだからです。相撲の母国である日本でできなかったのに、他の国では難しいでしょう」

 とはいえ、相撲は国際的な人気になっていると白鵬氏も言っていた。

「確かに人気になっていて、ニューヨークにも相撲クラブはあります。でも、相撲部屋にいるわけでもないから、競技としてちょっと違うんです。どちらかというと格闘技の一種になってしまっています。それはちょっと違うように思います」

 今回、損をしたのは相撲協会か、それとも白鵬氏か。

「もちろん相撲協会でしょう。相撲ファンだって協会のダブルスタンダードにはうんざりしているんじゃないですか。あれだけの記録を作った横綱に対してリスペクトもないわけですから。白鵬にはもう一度、親方をやらせてあげたかったですね」

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デイリー新潮編集部

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