「静かな退職」は一時的なブームでは終わらない? 「出世」や「独立」を目指さないAI時代の“勝ち組”の姿とは

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オレはオレ

「定年」という言葉はどこか哀愁が漂うものである。60歳となり、同じ会社に約40年間勤めてついにその最後の日を迎え、一応部署の人々にお礼のスピーチをする。場合によっては65歳までの雇用延長はあるものの、役員にならなかった人物としては最前線での活躍は見込めないことが多い。

 しかし、これを悲観的に捉える必要はない。あまりにも無能、ないしは有害で会社がクビを切らない限り、多くの人は無事に定年を迎えられる。平穏かつ幸せにそうした定年を迎えるにあたり重要なのは、早い段階で「私はもう出世しない」と腹をくくることである。いつがそのタイミングかといえば、40代前半でその方針は固めた方がいい。

 最近、相次いで「もう出世しないであろう大企業の社員」と会った。彼らは52~59歳で、役員になった同期のことは称賛しつつも、「オレはオレ、オレは楽しい人生を送ることにした」というスタンスを明確にしていた。

 彼らは同世代のもう出世しないであろう社員らとともに飛行機で福岡まで来て、私が住む佐賀を経由して長崎に旅行すると言っていた。金曜日と月曜日に有給休暇を取り、3泊4日の九州ぶらり旅である。

別の方針を立てる

 これを聞いた時、正直「羨ましい!」と思った。こちとら有給休暇も最低保証賃金もないフリーのライターである。彼らが50代でこのような旅をしていることはなんと良い身分であろうか。会社の発展については、同世代の役員と若者に任せ、オレ達はまぁ、やることはやるけど、そこまでがつがつ働かず、安定的身分で遊びも充実させるよー、といったスタンスでいるのである。

 もちろん、お子さんがすでに働いていて育児の必要がなく独立した存在になっているというのも大きいが、彼らの「もう出世はどうでもいい」というスタンスは見習うべきものではなかろうか。「定年後に会社を興して金持ちになる」といった野望を抱く50代も時にはいるが、まぁ、成功する人は稀だろう。

 やはり起業というものは20~40代でするものだし、サラリーマンでも30代中盤では同期の中でも誰が出世するかはなんとなく分かるもの。そこで自分が出世しないであろうことが分かったら、仕事人として別の方針を立てる必要がある。それはコレだ。

〈私は出世しない。だったら会社から解雇されない程度にキチンと働き、あとは自分の楽しいことをし続けて定年を無事迎える。出世する同世代や出世しそうな若者に嫉妬することなく、とにかく地道な仕事をしてトラブルを起こさない〉

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