島田紳助の「電撃復帰」はあるのか 引退から10年以上も「待望論」が消えないワケ

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突出した手腕

 紳助氏の「復帰説」がなぜこれほどまでに盛り上がるのかといえば、その存在感がいまだに大きいからだ。司会者としても企画者としても、彼の番組作りの手腕は突出しており、「行列のできる法律相談所」「クイズ!ヘキサゴンII」など、ヒット番組をいくつも手がけてきた。

「行列のできる法律相談所」では、法律番組にバラエティ要素を取り入れ、堅苦しさを感じさせないエンタメ性を確立。「クイズ!ヘキサゴンII」では「おバカキャラ」という概念を打ち出し、芸人ではないタレントの魅力を引き出す手腕を見せた。その結果、番組から生まれたアイドルユニット「羞恥心」「Pabo」は音楽チャートを賑わせるほどのヒットを飛ばし、番組の枠を超えた影響力を持った。芸能界を離れた後も、彼を慕う芸人や関係者は多く、現在も業界内に人脈を保っていると噂されている。

 その存在がいかに特異であったかは、彼の引退後にテレビ界にぽっかりと空いた「紳助ポジション」がいまだに埋まっていないことからも明らかである。進行力、頭の回転の速さ、笑いの精度、トーク力など、すべてにおいて高い水準を保ちながら、番組全体のトーンを自在にコントロールする技術は唯一無二のものだった。

 紳助氏は、ただテレビに呼ばれて出ていただけのタレントではない。彼はテレビを「どう作るか」を深く理解しているプロデューサータイプの人間だった。それこそが彼がテレビ史に名を残した最大の理由である。

 また、引退から10年以上が経過し、当時とは社会の空気も変わってきた。コンプライアンスに対する意識がより一層強くなった一方で、不祥事を起こしたタレントが復活することも珍しくなくなった。紳助氏自身も、以前のように地上波でのレギュラー復帰を目指すというよりは、配信系メディアなどの限定的な形で、徐々に世間との距離を詰めていく可能性はある。

 もちろん、いまだに否定的な声もある。彼の復帰を歓迎する声がある一方で、簡単には許容されないムードもある。それでも、彼が今後もこのような顔出しの機会を増やしていけば、世間の感覚も少しずつ変化していくかもしれない。

 ネット上では、彼がYouTubeやイベントなどで表に顔を出すたびに、その見た目や言動に注目が集まり、復帰を期待する声も出ている。復帰があるのか、ないのか。その答えは本人にしかわからない。ただ、島田紳助という名前がいまだに求心力を持っていることだけは確かである。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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