令和ロマン・くるま、「自虐ネタ」で見事な復活 「何をやってでも笑いを取る」ハングリー精神

エンタメ

  • ブックマーク

逆風を追い風に

 5月28日深夜放送の「永野&くるまのひっかかりニーチェ」(テレビ朝日系)でも、久々にレギュラー番組に復帰したくるまは、永野と三谷紬アナにあれこれ問い詰められながらも、笑いを生み出す場面を演出していた。

 復帰後のくるまは、かつての自粛期間を逆手に取った自虐的なネタを披露することで、視聴者や共演者の笑いを誘い、逆風を追い風に変えるような立ち回りを見せている。

 彼の不祥事はキャリアを脅かしかねない出来事だったが、くるま自身がその過去を隠すことなく、むしろ笑いに昇華する姿勢を見せることで、再び支持を集めることに成功している。令和ロマンのYouTubeチャンネルでも、自らの不祥事や境遇をネタにした企画動画を矢継ぎ早に公開しており、ファンの間では彼の開き直ったスタンスが好意的に受け止められている。

 幸いだったのは、くるまの不祥事が不倫や薬物絡みのトラブルなどと比べると致命傷ではなかったことだ。問題とされたのは過去にオンラインカジノを利用していたことと、事務所に無断で謝罪動画を公開したことだった。前者はもちろん問題行為ではあるのだが、自分から罪を認めたということもあって、イメージが大きく失墜したとまでは言えない。後者に関しては、事務所とタレントの間のトラブルであるため、事実関係がはっきりせず、客観的には何とも言えないところがある。

 トラブルが致命的ではなかったからこそ、彼は復帰後にそれをネタにすることができた。ただ、それもやりすぎると見る側がうんざりしてしまうかもしれないし、不祥事で実害を被った関係者は良い気持ちがしないかもしれない。しかし、悪いことも含めて何でも笑いに変えてしまうのは、芸人の性(さが)であるとも言える。受け手がそれを楽しんでいるならば、そのこと自体は否定しようがない。

「M-1グランプリ」で前人未到の二連覇を達成したくるまには「吉本のエリート芸人」というイメージがあった。しかし、復帰後はむしろ「何をやってでも笑いを取る」というがむしゃらなハングリー精神を感じる。芸人としての器は一回り大きくなったのではないか。今後の活動が楽しみだ。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。