【セ・パ交流戦】西武が広島に3連敗で「主力2投手」の起用法に物議 楽天では巨人戦での「大内誠弥」4回降板に疑問符

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トミー・ジョン手術は回避したものの

 西武でもう一人気になった先発投手が、大卒2年目の武内夏暉だ。昨年はルーキーながら今井と並ぶチームトップタイの10勝をマークし新人王を獲得。今年は自主トレ中に肘の不調を訴えて出遅れるも、5月14日のソフトバンク戦で一軍復帰を果たし、5回を投げて1失点で、今シーズン初勝利をマークしていた。しかし、交流戦前最後の登板となった5月29日の楽天戦では、6回、5失点と試合を作れずに負け投手となっている。

 そして、6月8日の広島戦でも1回にいきなりファビアンのソロホームランで先制を許すと、4回には矢野雅哉のツーラン、5回には集中打を浴びて4回1/3、7失点と試合を作れず連敗を喫した。

 今井のように試合終盤まで引っ張ることはなかった。しかしながら、気になった点は登板間隔である。一軍復帰からこの日が4試合目の登板だったが、これまでの3試合を見ても昨年の良かった時と比べるとボールの勢いがなく、まだ本調子には戻っていないように見えた。

 前回の登板となった楽天戦で打ち込まれたのを見れば、一度ローテーションを飛ばして、二軍で調整させるという判断もあったのではないだろうか。武内は、国学院大に入学してから急激にスピードアップした。そのような投手は、体にかかる負担が大きくなると言われている。

 大学時代に東都リーグでしのぎをけずり、同じくドラフト1位でプロ入りした草加勝(亜細亜大→中日)や下村海翔(青山学院大→阪神)らもプロ入り後にトミー・ジョン手術を受けている。武内は、トミー・ジョン手術を回避したとはいえ、開幕から出遅れたことを考えても、もう少し慎重に起用しても良かったのではないか。

尻上がりな投球内容だっただけに残念だった4回降板

 一方でもう少し長いイニングを投げさせても良かったのではないかと感じたケースがあった。それが6月7日の巨人戦でプロ入り初先発した大内誠弥(楽天)だ。

 大内は、2023年のドラフト7位で、日本ウェルネス宮城高から入団した。昨年は二軍で10試合に登板して0勝1敗、防御率3.82に終わったが、今年の二軍戦は、7試合の登板で1勝2敗、防御率1.97と結果を残している(6月9日現在)。

 一軍初登板となった巨人戦でも1回と2回は走者を許しながら無失点で切り抜けると、3回と4回はいずれも三者凡退と見事なピッチングを披露した。

 しかしながら、5回表に打席が回ってきた場面で代打を送られて、ここで降板となったのだ。球数は61球と決して多くはなく、投球内容を見ても尻上がりに調子を上げていたように見えただけに、もう少しその投球を見たかったというファンも多かったのではないだろうか。

 試合は0対0という展開で、楽天としては早く先制点を奪いたいという思惑があったことも理解できるが、代打策も結果的に得点に結びつかず、最終的に0対2で敗れている。高卒2年目の投手を大事に育てたいチームの方針は分かるが、一軍で5回まで投げ切ることと、4回で降板したことでは、やはり充実度が違う。

 近年は先発投手を早めに降板させるケースが多くなっている。とはいえ、やはり長いイニングを投げられる投手を多く揃えられることは、チームにとって大きなプラスとなることは間違いない。それだからこそ、エースをどこまで引っ張るか、経験の若手をどう使うかは重要であり、今回の記事で取り上げた3人の投手については、いろいろと考えさせられるものがあった。この判断が、今後のシーズン、さらに来年以降にどう影響してくるのか、引き続き注目していきたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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