東日本大震災での放出は「4万トン」…備蓄米は本当に「100万トン」も必要なのか JAの影が見え隠れする“備蓄米ビジネス”のカラクリ
コメが安くなると困るJA
消費者にとっては回転備蓄のほうがメリットは大きい。その時点での流通量などで価格に変動が起きるとはいえ、農水省の試算では3年の保管期限を過ぎた「古古古米」は60キロ3万円、つまり5キロ2500円で売却できると予測している。
「もし現在も回転備蓄を行っていたら、保管に使われる国民の税金は5分の1で済んだ可能性があります。しかも農水省の試算で保管期間は3年でしたが、今の制度は5年保管です。JAは備蓄米の保管も引き受けていますから、長く預かると保管料は増えます。また回転備蓄は昨夏から始まったコメ高騰も封じ込めたかもしれません。専門家はコメの価格が異常に上昇した原因としてコメ不足を指摘しています。定期的に5キロ2500円台の古古古米が市場に流れることで、需要と供給のギャップが少なくなったのではないでしょうか。要するに全て話は逆で、コメ価格が安くなるからこそ、JAは回転備蓄を棚上備蓄に変えるよう自民党や政府に迫ったのです。古くなった備蓄米が市場に放出され、価格が下がることをJAは常に嫌がってきました」(同・記者)
棚上備蓄に変えれば古くなった備蓄米は非主食用として売却される。つまりコメの小売価格には影響を与えない。そして備蓄米が放出されず、ずっと倉庫に置いてもらえれば、JAには保管料が毎年転がり込んでくる……。
これこそがJAによる“備蓄米ビジネス”のカラクリだ。これでは“江藤米”の流通スピードが遅かったのはJAの責任なのかどうか、政府の調査対象に含まれても仕方ないだろう。
JA批判が再燃する可能性
JAは“江藤米”の価格を不当に釣り上げ、大幅な収益を手にいれた──ネットでよく目にする投稿だが、これは事実とは異なる。ではJAがコメの価格が下がらないよう“暗躍”していたとの疑惑はどうか。
「“小泉米”は随意契約で売り渡され、『備蓄米』と明記することで低価格での販売が実現しました。一方の“江藤米”は備蓄米の入札が行われ、JAは高値で落札しました。さらに流通時には『販売時は備蓄米と明記しないでほしい』と要請しています。備蓄米よりただのブレンド米のほうが小売価格は高くなるからです。“小泉米”と“江藤米”はまさに正反対の方法で小売に届けられました。小泉農水相はコメ価格高騰の原因分析を行う考えを明らかにしています。もしJAの『コメ価格の高値維持』との狙いが明らかになれば、消費者のJA批判が再燃するのは間違いありません」(同・記者)
すでに関係者の“JA離れ”は始まっているとの指摘もある。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹によると、1980年代まで農協の集荷シェアは95%あったという。
ところが2022年度を見ると53%とほぼ半減。さらに2024年産に限ると26%にまで落ち込んだ。コメ農家がJAを通さず、様々な販路でコメを売っていることが分かる(註1・2・3)。
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