「日枝久氏も訴えるべきでは」「いつもの後手後手感が否めない」フジテレビの港前社長提訴発表を元テレビ朝日法務部長が解説
なぜ日枝氏を訴えないのか
だが、「後手後手感が否めない」と続ける。その理由は、フジの親会社であるフジ・メディア・ホールディングス(FMH)が今年初頭の段階で、一度、港氏らの提訴を見送っているからだと言う。
「ちょうど昨日、FMHの株主の男性が、現旧経営陣15人に対して233億円の賠償を求める株主代表訴訟の第一回口頭弁論が東京地裁でありましたが、株主代表訴訟は、まず株主が会社に対して役員を責任追及する裁判を起こすよう請求し、会社が応じなかった場合にはじめて株主が提訴できるというルール。つまり株主代表訴訟が行われているということは、FMHとしては株主からの役員責任追及の要求を断っていたのです。フジはこれまでも、中居氏の問題について一度はクローズで記者会見を開き、批判を受けてもう一度フルオープンの会見を開くなど、世間の批判を受けた後手の対応が見受けられた。今回も一貫性がないと見られてしまうのではないでしょうか」(同)
さらに西脇氏が指摘するのは、フジが訴える旧経営者に、一連の問題を引き起こした“元凶”と言われている日枝久フジ前取締役相談役が入っていない点だ。
「港氏と大多氏は、中居氏から被害を受けたと訴え出た女性社員からの訴えに適切な対応を取らなかったという直接的な責任を負う立場。一方、日枝氏は中居氏の問題には直接的には関与していないとされているので、日枝氏を訴えたとしても法廷でどこまで責任が認められるかは不透明です。ただ、取締役であり大きな影響力があったとされる以上、経営責任を問うこと自体は可能。“過去との決別”のアピールが狙いなのであれば、日枝氏も訴えた方が明確なメッセージになったのではないでしょうか」(同)
今後、注目すべきはフジが港氏らに「いくら賠償金を請求するか」だという。
「株主代表訴訟では233億円を請求していますが、それに類するような額になるのか、それとも数億円といった額になるのか。金額次第で、フジのこの訴訟に対する“本気度”が見えてくると思います」(同)
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