「育児も介護も正解や王道はない」 ワンオペワーママを助ける専業主婦を見てかみしめたこと
家事、マジ、面倒。自分だけなら洗濯も掃除も料理も苦にならないし、+猫2匹でも楽勝だ。これが1人分増えただけでてんてこ舞い。要介護なら2倍の手間がかかる。先週から父の在宅看取り介護が始まり、冒頭の言葉を呟く回数爆増。7年も施設にいてくれたので、在宅介護は対岸の話と思っていたが……猛烈な勢いでこっち側の話になった。
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というわけで「対岸の家事」です。専業主婦にワンオペワーキングママ、育休中の官僚に心が危ういシングルマザーが登場。私は親ではないので対岸の話と思っていたが、各々が抱える孤独や苦悩を知ることができた。価値観や考え方、家庭環境、生き方の違いはあるが、「みんなちがって、みんな大変」を共有し合える、いいドラマだなぁと思った。
美容師を辞めて専業主婦を選んだ主人公・村上詩穂を演じるのは多部未華子。居酒屋店長の夫・虎朗(とらお・適役の一ノ瀬ワタル)と愛娘と、穏やかな日々を送っている。
隣家に住むのは、共働き夫妻&2児がいる長野一家。育休明けに、激忙の営業部から総務部へ異動した礼子(江口のりこ)が事実上のワンオペ育児を担う。夫(川西賢志郎)は、休日&人前だけで張り切る非協力タイプだ。
専業主婦とワーママの相いれない価値観で対立と思いきや。お互いの孤独感や悩みを共有し、ベランダや屋上で会話する仲に。ま、子どもの発熱でにっちもさっちもいかなくなった礼子を詩穂が救った経緯がある。
多部が温かくて優しくて、矜持があり、ちゃんとNOが言える専業主婦を好演。のりこも全国のワンオペワーママの阿鼻叫喚を体現し、共感を呼んだのではないか。
詩穂が公園で出会ったのは厚生労働省の官僚で育休中の中谷達也(ディーン・フジオカ)。妻(島袋寛子)は外資勤務で、いわゆるパワーカップルだ。中谷は詩穂に対して、説教モードで持論を押し付ける。知的富裕層特有の持論は確かに説得力がある(おディン様だからかな)。ただ、育児は思い通りにはいかず。中谷自身が毒母(長野里美)に苦しんだ経験も重なり、不安定な精神状態に。そんな中谷を救ったのも詩穂。神だよ。
詩穂も実は父(緒形直人)と疎遠だ。母亡き後、家事をこなすために部活と進学を断念した過去がある。無気力な父に絶望し、高校卒業と同時に家を出たのだ。
それぞれの背景や問題が見えてきたところで、私にとって対岸ではない、共感できる家族も登場。詩穂が娘の夜泣きで苦しんでいたときに声をかけてくれた専業主婦の先輩・坂上さん(田中美佐子)だ。一人娘は結婚や出産ではなく仕事を選んだ里美(美村里江)。坂上さんが認知症という点で、がぜん、膝を乗り出した次第。
そうそう、礼子の会社の先輩(片岡礼子)がぶつかったガラスの天井もわが事のように悔しかったし、詩穂に悪意を抱くシングルマザー(織田梨沙)の来し方も気になる。大変なのは自分だけじゃない、みんな大変なの。育児も介護も正解や王道はない。うらやんでもねたんでも悔やんでも仕方ない。ため息つきながら生きていくんだよなぁ、とかみしめた。