【追悼・長嶋茂雄さん2】ミスターが残した伝説の珍プレー まさかの敬遠球を“大根切り”でランニングホームランも

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「どうもバントになると、いい当たりになっちゃう」

 絶好のチャンスで、長嶋がまさかの送りバントを試みる仰天シーンが見られたのが、69年5月8日の中日戦である。

 7対7の9回に1点を勝ち越された巨人はその裏、安打と四球で無死一、二塁と反撃し、4番・長嶋に回ってきた。

 マウンドには4回から好リリーフのルーキー・星野仙一がいた。“燃える男”同士の対決にスタンドのファンは固唾をのんだが、なんと、長嶋は初球をバントするではないか。「同点なら打たせるが、1点負けで(次の)末次が当たっているのだから、バントは当然だ」という牧野茂コーチの指示だった。

 だが、長嶋の打球はライナー性の小飛球となり、サード・島谷金二がダイレクトキャッチ。二塁に転送され、併殺という最悪の結果に……。スタンドから「なぜバントをさせたんだ」と怒りの声も上がった。

「自信満々だったのだが、真芯に当たり過ぎた。普通のスイングでは芯に当たらないのに、どうもバントになると、いい当たりになっちゃう」と苦笑いした長嶋だったが、2死一塁から牧野コーチの狙いどおり、末次が起死回生の同点二塁打を放ち、延長10回にサヨナラ勝ち。ONといえども、時には勝利のための1パーツとして用いることができたのも、V9時代の巨人の強さでもあった。

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 第3回の記事では、引き続き「抜群の天気予知能力」や、「長男・一茂氏誕生をめぐるらしからぬエピソード」など、微笑ましい「ミスター伝説」の数々をお届けする。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘!激突!東都大学野球』(ビジネス社)。

デイリー新潮編集部

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