5月31日と6月1日のプロ野球で「勝利を分けた」継投を徹底分析 「巨人」「ロッテ」にはミスが目についた一方で「阪神」は

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大勢と守護神・マルティネスの「勝利の方程式」に綻びが?

 もう1試合、継投の難しさを感じたのが、6月1日の中日対巨人戦だ。

 両チームが初回に1点ずつを取り合った後は、投手陣が踏ん張り、1対1のまま試合は8回を迎える。ここで巨人はセットアッパーの大勢を投入する。

 ヒットと2つの四球でツーアウト満塁のピンチを招くと、自らの暴投で失点。さらに、カリステに2点タイムリーを浴び、3点を勝ち越されて負け投手となった。

 大勢はこれまでも8回を任されてきた。5月に入ってからは登板数がかさんだ影響もあってか、少し不安定な内容が続き、5月27日の富山での広島戦には帯同せずにジャイアンツ球場で調整となっていた。翌日の広島戦では、チームに合流して8回を任されて無失点に抑えたものの、いきなりノーアウト満塁のピンチを招いており、30日の中日戦も2安打を浴びている。

 これらを考えると、“崩れる予兆”は十分にあったのではないか。大勢と守護神・マルティネスという「勝利の方程式」は、巨人には大きな強みなだけに、その一角が、不安定になると、巨人の阿部慎之助監督にとっても頭の痛い問題となりそうだ。

光ったのは阪神の継投

 その一方で、継投が上手くはまったケースがあった。それが5月31日の広島対阪神戦だ。

 5回表に阪神が木浪聖也のタイムリーツーベースで1点を先制。9回表には大山悠輔にもタイムリーが飛び出し、2対0で9回裏を迎えた。

 ここで、阪神・藤川球児監督は、クローザーの岩崎優ではなく、セットアッパーの石井大智をマウンドに送る。石井は、その期待に応えた。ツーアウトからモンテロに内野安打で出塁を許したものの、後続を抑えて試合を締めた。

 なぜ、岩崎ではなく、石井を起用したのか。岩崎は、5月16日の広島戦で同点の9回から登板して2点を失って負け投手となったほか、30日の広島戦でも4点リードの最終回に登板して、モンテロにタイムリーを打たれて1点を奪われた。

 それに対して、石井は、岩崎が負け投手となった翌々日の18日の広島戦で、2点リードの9回を任されて今シーズン初セーブをマークした。その経験を考えた抜擢だったと言えそうだ。阪神の投手陣は、救援防御率が12球団トップで唯一の1点台と力があるため、このような思い切った起用ができるといえるだろう。

 長いシーズンの中では調子が落ちてくる投手が出るのは当然だ。その中でどうブルペンをやりくりしていくか、重要になる試合も増えてくる。その中で首脳陣がどんな選択をしていくのか。今後も勝敗を分ける大きなポイントに注目して、デイリー新潮の記事で取り上げていきたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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