一軍も二軍も“ダントツ最下位”で危機的状況のヤクルト…それでも「明るい材料」はあると言える理由

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「二軍にいる若手の中では明らかに飛びぬけている」

 中村は1月の合同自主トレ中にコンディション不良を訴えてキャンプでは二軍スタートとなり、スロー調整を続けていたが、初実戦となった4月8日の西武との二軍戦では三者凡退と上々のデビューを飾り、ストレートは最速154キロをマークした。

 その後も徐々にイニング数を伸ばし、5月25日のDeNAとの二軍戦ではプロ入り後最多となる96球を投げて、6回を2失点5奪三振としっかり試合を作っている。二軍では6試合に登板して勝ち星こそないものの、防御率2.25。1イニングあたりの被安打と与四球で表すWHIPも0.83と安定感は十分だ。

 中村について、前出の編成担当者もこう話している。

「ヤクルトの二軍にいる若手の中では、ボールの力は明らかに飛びぬけていますね。コントロールに苦労することもなく、さすがドラフト1位という印象ですね。コンディション不良で出遅れていたので、慎重になっている部分もあると思いますが、この調子なら間違いなく、近いうちに一軍で投げることになるでしょう」

 大学時代も投球術やフィールディングに課題を残しながら、スピードは常時150キロを超えて、制球が安定していただけに、一軍でもどんな投球を見せてくれるかが楽しみだ。

かつての「V字回復」を再び見ることはできるか

 一方、下川は昨年オイシックスでプレーし、イースタン・リーグの最多奪三振のタイトルを獲得した。今年も開幕から安定した投球を続けて、5月1日には早くも支配下登録を勝ち取っている。アンダースローだが、ストレートは130キロ台中盤をマークすることもある。独立リーグとオイシックス時代に先発とリリーフの両方を経験してきた点も大きな強みだ。

 野手では、3年目の沢井廉(2022年ドラフト3位)を挙げたい。ルーキーイヤーの2023年には18本塁打でイースタン・リーグのホームラン王を獲得。その年のオフに行われたフェニックス・リーグで右膝の大怪我を負った影響で、昨年は成績を落とした。今年は二軍でチームトップとなる4本塁打を放ち、5月27日に一軍昇格を果たした。その日はノーヒットに終わったが、翌日からは2試合連続でヒットを放っている。貴重な若手の大砲候補である沢井。首脳陣は、今後も我慢して起用し続けてもらいたい。

 思い返してみると、高津臣吾監督が就任した2020年も勝率.373(41勝69敗10分)で最下位に沈んだが、翌年からはリーグ連覇を達成するなど驚きの飛躍を遂げている。今のチーム状況を見ると、あのような「V字回復」は容易ではないが、低迷している時期だからこそ、思い切った手を打てるはずだ。燕軍団の巻き返しに期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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