漏洩指示認定「斎藤知事」を「給与カット」で終わらせていいのか 元特捜検事は「刑事告発されるべき」と明言
県議たちの証言
第三者委は今回、井ノ本前総務部長から元県民局長の私的情報を提供されたという県議3人から証言を得ている。報告書の一部を抜粋する(原文ママ、【】は編集部註)。
まずT議員は《4月19日の夕方16時30分頃、会派の控え室に一人でいたときに、両手に大きいファイルが2つか3つ持ってE氏【井ノ本氏】が入ってきた。【中略】E氏から「これ、見てくださいよ」「ほんまたまったもんちゃうで、(※省略)。A氏【元県民局長】はなにやっとるんやという感じ。こんな人間が作った文書信用できるわけないやろ。(※以下省略)」というようなことを言われた》
そしてS議員は《日付は覚えていないが、令和6年4月22日の前、E氏が話があると訪ねてきたので、乙会派の会議室で会った。アポイントは取っていなかった。/E氏は「A氏のパソコンからこんなものが出てきました。見て下さい」と言い、ファイルを開けて見せてきた。/自分は目が悪いので、よく見えず、「何ですか」と聞いたところ、E氏は「(※省略)日記です。ちょっと(※省略)日記なんです。」と答えた》
さらにU議員は《4月の中頃までのことであるが、元県民局長の私的情報であることを前提として、ファイルを開いて(文書を)見せられたことはある。【中略】会話までは覚えていないが、E氏が「こんなことあるんですよ」と言って、ファイルの一部を開いたと記憶している》
いずれも井ノ本前総務部長がこれ見よがしに情報を提供してきたことを証言したのだ。
二転三転した前総務部長
当初、井ノ本前総務部長は私的文書のファイルすら持っていないと否定していたが、第三者委の事情聴取に対し供述を変更し、ファイルを受け取った事実を認めたものの「ファイルを見せて回ったことはない」と否定していた。ところが、今年2月になって代理人弁護士の作成した弁明書の中で、県議たちに《私的情報の概要を情報共有の意図で、口頭で伝えたことはある。ただし、具体的な資料は提示していない》とそれまでの供述を大きく変更した。さらに「知事及び元副知事の指示によるものである」とし、その場に斎藤知事の最側近と言われた小橋浩一理事(当時)がいたことも付け加えた。
その小橋前理事に第三者委が行った事情聴取にはこうある。
《「昨年4月上旬ごろ、元県民局長の私的情報の件を含めて知事に報告した際、いろいろな案件がある中で、その私的情報があったということも含めて、根回しというか議会の執行部に知らせておいたらいいんじゃないかという趣旨と理解できる知事からの発言があった」【中略】その後、知事からそのような指示があったことを副知事に相談した際には、「副知事が『そらそうやな。必要やな。』という発言があったと思っている」》
斎藤知事の側近で“4人組”と言われたうちの2人が反旗を翻したのだ。これらの証言をもって第三者委は「知事や元副知事の指示のもとで行われた可能性が高い」と結論づけたのだ。だが、それでもなお斎藤知事のスタイルは揺らがない。
中には「もう一度、百条委員会を」と報じたメディアもあるが、それでは堂々巡りだろう。知事は「県政を進めることで責任を取る」と言い続けているが、そんな県政に嫌気がさした兵庫県職員は続々と退職している。この異常事態から脱するにはどうすべきなのか、元東京地検特捜部の若狭勝弁護士に聞いた。
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