マックの“ちいかわ”ハッピーセットを買ったのは転売ヤーだけか 「マスコミが煽って一般の客が飛びついた」との声も

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買い占めは日本人の得意技

 数年前のコロナ禍を思い出してほしい。マスクや消毒薬を転売する転売屋は確かに存在したが、買い占めに走っていたのはごく普通の一般人であった。コロナ禍では、「トイレットペーパーが品薄になる」という情報が流れたこともあった。すると、トイレットペーパーが店頭から消えた。同じ光景は1973年の石油ショックの時にも起こったが、一般人の買い占めパワーは、転売屋をはるかに凌ぐものである。

 思えば、昨年にコメ不足が報じられた時も、一時的にスーパーの店頭からコメが消えた出来事があった。これは明らかに、一般客が不必要な分までも我先にと買い占めを行ったためであった。今回、ちいかわのハッピーセットが早くも売り切れた原因もそうした消費者の行動にあると、百貨店店員B氏は次のように推測する。

「はっきり言ってマスコミが煽りすぎた一面が大きいと思います。日本人は流行りものに飛びつきやすいうえ、品薄、限定という言葉にとにかく弱い。人気があると言われたら、興味がなくても“とりあえず買っておくか”と考える人は多いんです。長年接客業を行ってきた経験で推測すると、今回のハッピーセットはちいかわに興味がないのに“話のネタになるか”という感覚で買った人も相当数いるはずです。

 一時期、高級腕時計が入手困難になったことがありました。これも従来の時計好きではなく、“ニワカ”な人が“流行っているから”という理由で買うケースが増え、品薄になったのが実情です。同時期に高騰したポケモンカードなども同じですね。そういった日本人の性格を考慮し、マクドナルドもちいかわコラボは潤沢に数を準備しておくなどの対策をすべきだったと思われます。何度も謝罪する事態になっているのですから、経験から学ぶべきでしょう」

早くも値崩れを起こしている

 さて、ちいかわのハッピーセットであるが、既にメルカリでは値崩れを起こし始めた。1個400~500円程度でも買えるようになっており、転売したところでほとんど儲からなくなっている。ちいかわに限ったことではないが、限定商品で長くプレミア価格で取り引きされる商品はごく稀である。日本人は熱狂しやすい一方で飽きるのも早い。よほど特別なものでない限り、数があるものであれば、時間が経てば定価よりも安く買えるようになる。

 また、昨今の転売屋は、転売の情報サイトなどで共有された情報をもとに買い占めを行う。女性週刊誌にしばしば転売やせどりをして金を稼ぐことをすすめる記事が掲載されているように、主婦層にも転売に手を出す人は多いようだ。しかし、そういった転売屋は、専門的な知識が著しく低い。そのため、闇雲に買いすぎて在庫を抱えてしまい、値崩れを起こした頃に投げ売りしている例も少なくない。

 転売屋も薄利多売な商品を機械的に仕入れて売るだけでは、利益を生み出すことが難しくなっている。そのため、素人が安易に手を出すのは危険といえる。だが、マクドナルドがそうであるように、地方在住者は自宅近くに店舗がないケースが多く、交通費と時間を考えると転売屋から買ったほうが安いケースもままある。そのため、転売の需要はある程度はなくならないとも思われる。

 そして、転売が横行する背景には、企業側に問題があることも少なくない。マクドナルドは過去に「星のカービィ」とコラボした案件など、ハッピーセットでたびたび炎上騒動を起こしているのだが、今回の事態をみて、真剣に対策を取ったといえるだろうか。無論、ハッピーセットは子供たちがハッピーにならないようでは本末転倒である。今後、大型のコラボ案件では何らかの対策をするべきであろう。

取材・文=宮原多可志

デイリー新潮編集部

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