「手相を見ています」「生活意識調査のアンケートを…」 解散命令が下った「旧統一教会」 元信者が明かす“布教マニュアル”の全貌

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 2025年3月25日、旧統一教会に対して東京地方裁判所から解散命令の決定が出た。これは、長年にわたって起こり続けてきた悪質な霊感商法や高額献金などの被害は、教団の組織ぐるみで生み出されたことが司法の場で認められたことを意味する。

 旧統一教会はこれまで、霊感商法や高額献金は「信者らが勝手にやった」ことだとして、教団本部はかかわっていないとする姿勢を続けてきたが、それが詭弁であることが今回の決定から認定されたといえる。

 旧統一教会の信者だった筆者は、かつて教団が作成したマニュアルに基づいて、布教や高額商品販売の勧誘を行ってきた。以下、その実態を明かす。
【前後編の前編】
【多田文明/ジャーナリスト】

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「手相を見ています」

 現在、40代以降の方で、街頭で「手相を見ています」「生活意識調査のアンケートをしています」と声をかけられた経験を持つ人は多いのではないかと思う。これを行っていたのは、すべて旧統一教会の信者であると言って良い。足を止めた人は、個人情報を聞き出されて、教団の思想を教えこむビデオセンターに連れ込まれることになる。

 私は1987年から1996年までの約9年間、信者として生活を送った。当時、ビデオセンターや、泊まり込みのセミナーなどに参加させ、その参加者を教化システムにのせる講師や責任者を長く務めてきたので、その実態に詳しい。

名前を隠しての誘い

 旧統一教会の誘い込み方の大きな問題点は、旧統一教会の名前を隠しての誘いである。人生を大きく左右するであろう「宗教の勧誘」であることを伝えずに誘う悪質さがここにある。もしここが「宗教ではないか?」と聞かれたら、「違います」と答えるように指示されており、教団名を隠しての勧誘は内部では徹底されていた。

 ビデオセンターでは、自己啓発の講義と称して統一教会の教義を、受講者に知られないようにしながらビデオ受講を通じて、こっそりと植え付けて信者への道へと歩ませようとする。

 しかも、マニュアルを使って、緻密に末端の信者にその手法が伝えられていた。これにより、最近、入ったばかりの末端信者でも、長年、勧誘活動をしてきたようなプロフェッショナルな存在として人を誘うことができた。これは今の特殊詐欺のグループでも主流になっており、まさにその先駆けといえるものだ。

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