アメリカで広まる「労働者はAIに道を譲りなさい」の衝撃…“ホワイトカラー”から置き換えられるとの声も

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ポジティブな話も紹介

 さらに、会議ではSEO(検索エンジン最適化)についての議論にもなる。元々グーグルの1ページ目にいかに自社コンテンツが入るかの勝負をし、SEOの達人のような人物が重宝されたが、今やAIに選ばれるようなコンテンツをいかに作れるか、AIのアルゴリズムをどう解明するかの勝負になっているのでは、という話になった。

 このように、AIをめぐる議論は、常に自分が本当に必要な人材かどうか不安になる要素を備えているのだ。では、これから先、どんな仕事が生き残れるのかといえば、建設業、配管工、電気・設備工事、ガラス屋、左官工、ブランド野菜・果物農家といったところが挙げられた。

 ウォールストリートジャーナルの記事は結びの方で、スタンフォード大学のチャールズ・オライリー教授(労働管理が専門)の「市場環境が変われば仕事の機会は十分なものになる。そんな時、CEOたちは従業員がいかに重要かを語るようになり、従業員にとっては有利な状況が来る」とポジティブな話を紹介。

どんでん返し

 しかし、記事の締めとして最後に再びどんでん返しが来る。HingeやTinder等のマッチングアプリを運営するマッチグループのスペンサー・ラスコフCEOが投資家にした話だ。同氏は、マネジャークラスの階級を少なくし、5人に1人を解雇すると説明したというのだ。アメリカで起こっていることは対岸の火事ではない。日産も世界で2万人を削減すると発表した。

 それでも、人間は新たなテクノロジーが登場した後もなんとか仕事は作ってきた。かつて広告会社には、企画書をMacintoshのPCできれいに書き直してくれる「Mac屋さん」が存在した。1人1台のPCが付与されるようになり、彼らは姿を消した。ネットのファイル転送サービスの発展でバイク便の仕事も激減している。だが、Mac屋さんもバイク便のライダーも、その後、生き延びるために別の何かをしたはずである。

 今は慌てず、オライリー教授のようにドンと構えておいた方が日々の仕事をするにあたりビクビクしないで済むだろう。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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