「巨人岡本」は前半戦での復帰が絶望的…4番打者の長期離脱を乗り越え優勝したチームと、優勝に立ち会えなかった選手の「その後」

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戦線離脱で優勝の瞬間に立ち会えなかった4番が辿った道

 開幕から4番不在で戦いながら、リーグ優勝と日本一を達成したのが、2003年のダイエーである。

 前年、不動の4番として32本塁打、89打点を記録した小久保裕紀が3月6日のオープン戦、西武戦で本塁クロスプレーの際に右膝前十字靭帯断裂など完治まで約6ヵ月の重傷を負い、シーズン出場が絶望となった。

 しかし、長年の補強が結実し、黄金期を迎えていたチームは、投打とも戦力充実。4番は松中信彦が務め、打率.324、30本塁打、123打点と小久保の穴を埋めた。前後を打つ井口資仁、城島健司、バルデスも揃って100打点以上を記録し、小久保の抜けた三塁を守った高卒4年目の川崎宗則も打率.294、30盗塁の好成績でレギュラー定着をはたした。

 投手陣も20勝の斉藤和巳をはじめ、杉内俊哉、和田毅らがリーグトップのチーム防御率3.94をマークし、全球団に勝ち越す完全優勝。日本シリーズでも阪神を4勝3敗で下し、4年ぶりの日本一に輝いた。

 ちなみに阪神も、開幕から4番を打ち、11本塁打を記録した浜中治が5月に負傷離脱しており、くしくも4番が抜けたチーム同士の頂上決戦となった。

 そして、ダイエーが栄冠を手にした結果、皮肉にも球団内における小久保の立場は微妙なものになった。「今季は小久保がいなかったから優勝した」とフロント関係者が陰口を叩いていることを知った小久保は、米国での治療費約2000万円も支払われず、自腹になったことも併せて球団に不信感を抱き、「ホークス以外なら、どこでもいい」とトレードを志願。異例の無償トレードで巨人に移籍した(2007年にFAでソフトバンク復帰)。

 前出の落合もそうだが、戦線離脱中で優勝の瞬間に立ち会えなかった4番は、その後の野球人生が劇的に変わる傾向が強いようだ。

 岡本はチームがまだ優勝の可能性を残している時期の戦列復帰が見込まれるだけに、休んでいた分をバットで取り戻したいところだ。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘!激突!東都大学野球』(ビジネス社)。

デイリー新潮編集部

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