【後編】「渡鬼」脚本を執筆「AI橋田壽賀子」は“ご本人”を超えたか? 辛口コラムニストは「ファンなら見る価値はある」

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 AI橋田壽賀子が脚本を書いた「渡鬼 番外編」(BS-TBS)が5月11日に放送された。辛口コラムニストの林操氏の分析では、メインキャストは出てこないもののドラマの設定としては問題なかったという。後半ではいよいよAI壽賀子はオリジナルを凌駕できたかに迫る。(前後編の後編)

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アナウンサー:舞台は「幸楽」。女将となった田口愛(吉村涼)と夫・誠(村田雄浩)のもとで育つ娘・さくら(安藤美優)は、難関大学に通いながら親に内緒でメイド喫茶でアルバイトをしていたことが発覚し、家族に波紋が広がります。親の思いと子の自立、そして言えない本音――時代が変わっても親子の葛藤は変わらず、令和の価値観と昭和の家族観が交錯する物語です……というのが、「番外編」公式サイトで紹介されている筋立てですが。

林:つまりは至極単純、でしょ。この程度の筋立てならAIの自律生成も至難ではないかもしれないけれど、実際には安藤の大学合格とかアキバの萌えカフェとかの状況設定は人間がやってるはず。その先の、バイトがバレて大喧嘩、長ゼリフと大げさ芝居の応酬が延々、そして……という筋立ての流れは単純だから、AIに任せるまでもなかったでしょう。

アナ:ええ。

林:もしそこまで任されていて、その結果がアレだとしたら、「メカ壽賀子、特に高性能じゃねぇな」という気もするけれど、そこを突き詰めていくと、生身の壽賀子――特に晩年の――がどこまで高性能だったかという話になっちゃう。メカ壽賀子はあくまで生前の壽賀子から学んでいるだけのはずなので。

アナ:では、筋立ての要素をどう並べるかという構成の点ではいかがでしょう。

AIは何をした?

林:番外編の構成は、筋立てをおよそ物事が起きたとおりの順番で語るだけ。時間軸の前後を入れ替えたり、筋立てより以前についての回想シーンが挿入されたりといった時間の操作がなくて、これまたつまりは至極単純。わざわざAIにやってもらう必要性は低い。

アナ:そうか。そうですね。

林:娘はなぜメイド喫茶でフリフリの服を着たくなったのか、母はなぜそれに頑強に反対するのか、父はなぜ比較的寛容なのか、というあたりの説明になる過去のエピソードはすべて当人たちの説明くさい長ゼリフのなかで語られちゃうからね。それは壽賀子本人によるホンの特徴でもあるから、メカ壽賀子がそこから学んでそれに倣った構成を作りました……という可能性もないわけじゃないけれど、人間が指示したほうが安くて速い。

アナ:ここまでの林さんの見立てでは……

【1】設定、筋立て、構成というストーリーの3要素は人間が指示している可能性が高い
【2】もしAIに任される部分があったとしても、筋立てと構成については元来の橋田さんの脚本からして複雑ではなかったので、今回AIが関与していても特に驚くほどのことではない

……ということですね。

林:そうそう。あくまでも推測だけどね。

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