ラグビーW杯の真実 南ア撃破は「奇跡ではない」 自国開催ベスト8は「120%」確信
大村武則氏インタビュー第2回
「準備をして間違いなく勝ちにいった。結果は奇跡ですけど、奇跡ではないです」
2015年9月19日、イギリスのブライトンで世界が目撃した「衝撃」を、ラグビー日本代表元チームマネージャーの大村武則氏(59)はそう振り返る。当時、世界ランキング3位の超強豪・南アフリカを34-32で撃破した試合は、「ブライトンの奇跡」と世界中で称賛された。しかし、大村氏の口から出てくる言葉は確信に満ちたものだった。(全4回の第2回)
***
【写真】なぜ、勝てたのか…ラグビー日本代表の貴重な舞台裏、30枚以上
「僕らは勝つために準備をしてやってきましたから。目標を達成しただけで、予想していた範囲内のこと。結果の85%はプロセス、つまり準備で決まる。残りの15%が偶然や外的要因です」
「ブライトンの奇跡」は偶然ではなく、必然だったという趣旨を大村氏は繰り返した。その表情からは、4年にわたる壮絶な準備の日々が透けて見える。
体格で劣る日本が世界の強豪に勝つためには、どうすればいいのか。大村氏はコーチ陣やスタッフと徹底的に考えたという。
「優勝を狙う南アフリカは決勝をピークに設定している。つまり、初戦の日本戦は完全体ではない。これはめっちゃチャンスだと思いましたね」
この分析を基に、日本チームは大会初戦にピークを合わせる形で挑む。エディー・ジョーンズHCのもと、4年の歳月をかけてフィットネスと低いタックル技術を磨き上げ、南アフリカが本調子となる前に、自分たちのピークをぶつける作戦だった。
試合中、選手たちの感覚は鋭敏だった。前半15分頃には「あっ、今日行ける」と感じていたという。20分頃には相手の足が止まり始める。当たり負けしない。相手のほうが体重は重いが、低くタックルする練習を積んできた。次第に、試合の空気が変わり始める。ハーフタイムのロッカールームでは、「勝てる」という雰囲気になっていた。
終盤、日本は走力で南アフリカを上回り、最終的に途中出場のカーン・ヘスケスが劇的な逆転トライを決めて勝利を収めた。
「あらゆる想定をして、マネジメントしていました。勝ってもチームの雰囲気をあげすぎないこと。仮に負けても、次があるということ。4日後には、スコットランド戦があるんだぞということを意識させるようにしていました」
[1/2ページ]