コメ高騰でも農家は「負債の返済に回し、廃業」 2026年秋までは高値が続くという見通しも 「米価がどっちに転んでもコメ農家を続けるのは厳しい」

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「輸入するにはあまりに高額の関税が」

 この点について山下氏は、

「現在の制度下では、政府は無関税で年間77万トンのコメを輸入しており、そのうち主食用米の枠は10万トン。仮に多少この枠を拡大できても、価格の下落につながらない」

 民間輸入も急拡大し、今年度の輸入量は過去最高だった昨年度の20倍に達する見通しだというが、

「全体の消費量からすれば微小です。加えて、コメには1キロあたり341円と、大量に輸入するにはあまりにも高額の関税がかかる。国内の米価がさらに上昇しない限り、大きな存在感を示すことはないでしょう」(同)

「コメは国防の最重要カード」

 東京大学大学院農学生命科学研究科の鈴木宣弘教授も、安易に輸入米に頼る流れに警鐘を鳴らす。

「自給率がほぼ100%のコメは、食料安全保障の観点から見ても国防の最重要カードです。それを米国に対して初めから切っては、交渉にもなりません。コメまで自給率が下がってしまえば、いよいよ日本は他国に食料を止められたら終わりという国になってしまいます」

 高止まりする米価については、

「そもそも令和5年度の不作に端を発します。生産力を高めなくては米価は下がらないし、下がってもいつかまた同じことを繰り返す。現状、輸出米を作る農家には10アールあたり4万円の補助金が出ます。政府は今こそ素直に国内にコメがないことを認め、これをむしろ国内向けのコメを作る農家に渡して、増産体制を整えるべきです」(同)

「農家からの直販など、生産者・消費者双方が折り合える価格での取引を」

 消費者にできることはあるのか。

「農家からの直販など、生産者・消費者双方が折り合える価格での取引の仕方を探るべきです。国産米の市場を維持することが、日本の食を守ることにつながります」(近畿大学農学部の増田忠義准教授)

 まだまだ続きそうなコメ価格の高止まり。消費者から生産者まで、慎重な選択が迫られている。

 前編【「JAに放出すべきでなかった」 備蓄米が消費者に届かない本当の理由 「米卸がコメをため込んでいる」という批判に業者は真っ向から反論】では、備蓄米がなかなか消費者に届かず、コメの価格も下がらない理由について解説している。

週刊新潮 2025年5月22日号掲載

特集「コメ価格『高止まり』の謎を解く」より

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