このままで大丈夫? スポーツ紙が「千賀滉大」や「山本由伸」の好成績をスルーし「大谷翔平まっすぐ帰宅」をニュースにする理由

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スポーツ紙はいつまでも大谷頼みでいいのか

 また他にスターがおらず、大谷が圧倒的な存在となっていること以外にも、報道が過熱する理由があるようだ。スポーツ紙の記者はこう続ける。

「今はどの世代もスマートフォンやタブレットでニュース速報を見る時代です。時差の関係でメジャーの試合が行われているのは、日本の早朝や昼間ということが大半ですが、そこで速報記事を出せば簡単にアクセスが稼げる。特に、大谷の場合はホームランを打てば、それだけで速報が出せるので、報道する側からしてもこれほどありがたいことはないですよね。誰からどこに打ったのかということに加えて、今は打球速度や飛距離などもすぐに分かるので、その数字を紹介すれば記事が完成するわけですから……。非常に『費用対効果』も高いと言えます」

 そのため、各媒体とも大谷専門記者が彼の動向をくまなくウォッチしているのだという。

「どの媒体もいかに早く大谷のホームランをまとめて記事をアップするかということに注力しています。頼むから怪我で長期離脱するだけは避けてほしいと考えている報道関係者も多いと思いますね。あと取材される側の選手や、NPBの球団からも『大谷は別格』という認識が広く浸透していることも大きいと思います。NPB球団の広報も、大谷のニュースがない日にリリースを出すなど考えているようです」(スポーツ紙記者)

 こういった話からも、大谷がいかに野球界を超越した存在となっているかがよく分かるだろう。ただ、他の日本人メジャーの活躍についても詳細を知りたいという野球ファンも確実にいるはずで、そのことも野球の裾野を広げていく意味では重要である。

 また、NPBなど日本の野球界全体でも大谷に続くスターを次々と生み出していくような努力が必要ではないだろうか。いつまでも話題は大谷頼み……そんな状況から早く脱することを望みたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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