「指原莉乃」の恐るべき対応力 自らの熱愛も「宣伝」に…完全に消えた「ヘタレ」キャラ

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自虐ネタを連発

 旧来のアイドルのような清純派のイメージにこだわらず、自虐ネタを連発して失敗を笑いに変える「開き直り型」のセルフブランディングを確立した。バラエティでは視聴者に求められていることを的確につかんで、それを提示していく計算高さがあった。

 目上の人との距離の詰め方も上手い彼女は、徐々にメインMCの隣でサポートに回るサブMCの仕事を増やしていった。番組内での自分の役割を理解して、常に絶妙なポジション取りをしていた。見た目にも気を使うようになり、かつてのヘタレキャラの面影は消えていった。

 いまや冠番組を持つほどの地位を確立した指原だが、バラエティタレントとしての自分の限界を冷静に見極めている。ある番組の中で、バラエティの世界で女性タレントがメインMCを務めることの難しさを語っていたこともあった。

 何より指原自身がバラエティに出続けることにそれほど強いこだわりを持っていない。ここまでドライな感覚を持った女性タレントは逆に珍しいほどだ。

 一時期に比べるとテレビの出演本数は減っているが、その分だけほかの活動に力を入れている。もともとアイドル好きだった彼女は、そのこだわりとセンスを生かして、アイドルプロデューサーとして精力的に活動している。また、カラコンやコスメのプロデュースも手がけていて、多くの女性から熱い支持を集めている。

 指原は人々の求めていることを的確につかむ天性のプロデューサー気質を持っている。今回の熱愛が報じられた際にも、自身のインスタグラムで自分のことには一切言及せず、その代わりにプロデュースしているアイドルの楽曲の告知をしていたことが話題になっていた。自分のSNSに注目が集まることを見越して、それを宣伝に使ってみせたのだ。

 彼女は、ほかの誰よりも「指原莉乃」というタレントを客観的な目線で見ている。そして、彼女をツールとしてどう動かせばいいか、という視点ですべての活動を行っている。バラエティで笑いを取り、アイドルをプロデュースし、商品を売る。しかもそのすべてに妥協がなく、結果が伴っている。

 指原莉乃はただのバラエティタレントではなく、現役最強クラスのインフルエンサー型の女性実業家である。その影響力は今後もますます拡大していくだろう。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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