5月16日の中日と阪神は「采配ミス」で“勝てた試合”を落とした? 先週のプロ野球で「選択が勝負を分けた場面」を検証する

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広島・大盛の代走起用が奏功

 継投以外の選手起用でも試合展開が大きく変わることがある。それが如実に表れたのが、5月16日の阪神と広島の首位攻防戦、第1ラウンドだった。

試合は1回、広島がこの日からスタメンに復帰した秋山翔吾の先頭打者ホームランと、坂倉将吾のタイムリーツーベースでいきなり2点を先制する。

 阪神打線の反撃は7回。広島先発の森下暢仁をようやくとらえて3連打で1点を返し、なおもワンアウト二・三塁から木浪聖也のタイムリーで同点に追いつく。しかし、代打の楠本泰史は、ファーストゴロでツーアウト。三塁走者の前川右京も走塁死。結果的に、併殺打に倒れて勝ち越せなかった。

 広島は9回、先頭の末包昇大が四球を選んで出塁すると、ここで大盛穂を代走で起用。坂倉の送りバントでワンアウト二塁とすると、ツーアウトとなった後にモンテロがセンター前へはじき返す。

 阪神外野陣は、かなりの前進守備を敷いていたが、大盛は迷わずホームへ突入し見事に生還。これが決勝点となり、広島が勝利をおさめた。大盛の代走起用が大きなポイントだったことは間違いない。

阪神もうまく代走を使えていたなら…

 一方の阪神は、7回の攻撃で1点を返してワンアウト二・三塁とした時に、二塁走者の前川に代走を出さずに、逆転の機会を逃している。

 ベンチには植田海や熊谷敬宥といった俊足の選手が控えていただけに、もったいないと感じたファンも多かったのではないだろうか。

 また、楠本の併殺打も、三塁走者(※木浪の同点タイムリーで、前川が二塁から三塁に進塁していた)が足のスペシャリストであれば、防ぐことができた可能性もあった。9回にもう一度前川に打席が回ってくることを考えて、代走を送らなかったと思われるが、一気に逆転を狙う手を打っても良かったのではないだろうか。

 継投もそれ以外の選手起用もこのように後で振り返ると大きな勝負の分かれ目だったというケースは非常に多い。今後もそんな勝敗の分岐点にスポットライトを当てて紹介していきたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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