一目で“犯人”が分かってしまう演技 ドラマ「キャスター」への“モヤモヤ”が収まらない理由

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気概は高く評価

 第5話では警察に局内の情報を漏洩していた社会部長、反社会勢力と金銭授受など癒着していた参事官の悪事が、進藤をはじめとする「ニュースゲート」スタッフの取材で暴かれていく過程が描かれた。報道の意義を説く進藤の熱弁もあり胸のすく思いの結末となった。それでも、一目で“犯人”が分かってしまうような一部過剰な演技が視聴者の脱落を誘発している。

「日曜劇場では『半沢直樹』あたりから“顔芸”と呼ばれるオーバーな演技が人気となり、2023年7月期の『VIVANT』で頂点に達したように思います。ただ、24年6月期の長谷川博己主演『アンチヒーロー』は抑揚を控え気味にしてかえって物語の凄みを醸し出すのに成功しました。

 また、今年1月期の松坂桃李主演『御上先生』は文科省官僚、高校の学生報道部長の姿を通して報道の在り方を丹念かつ真摯に追究していました。脚本の詩森ろば氏が2019年公開の映画『新聞記者』を担当しており松坂が主演。このタッグがうまく生かされたストーリーでした。

『キャスター』のキャストとスタッフも実際にTBS夜の報道番組『news23』のスタジオを訪れて現場の進行を体験しています。そのため番組放送シーンはリアルに見える一方、役柄の設定やキャラ造形に誇張が多い。これら両者の間にあるギャップが視聴者の“モヤモヤ”につながっているようです」(前出のライター)

 確かに、「キャスター」に漂う雰囲気は「VIVANT」との類似性を感じさせる。それは両作ともに阿部が出演しているから、という理由だけではないという。

「『キャスター』出演者のせりふ回しや分かりやすい演技、効果音の入れ方、カット割りなどが『VIVANT』に似ているのは演出担当者の影響でしょう。『VIVANT』に助監督として参加していた局内の演出担当者が今回の『キャスター』でメイン演出に初挑戦しているため、『VIVANT』の方法論を踏襲しているわけです。

 第6話以降は、反社会的な巨大組織と『ニュースゲート』の戦いが軸になりそうです。公安警察、別班、テントが三つ巴の争いを繰り広げた『VIVANT』のような壮大なストーリーになるのでは、と今後に期待がかかります」(TBS関係者)

 世間を揺るがせたスポーツ界の賭博事件やSTAP細胞騒動、大企業のジェンダー対策の不徹底など、社会問題に大きく切り込む気概は高く評価できる。「そもそも独立騒動で11年間も地上波ドラマに出演できなかった俳優・のんこと能年玲奈を第3話で引っ張り出したこと自体、テレビ局とエンタメ業界の癒着をひっくり返した“スクープ”ですよ」(前出のライター)

 最終回に向けてどんな“大スクープ”をぶっ放してくれるのか。

デイリー新潮編集部

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