たったの計280円…不景気の中国で若者がすがる「公設食堂」の激安メニュー 逃げ切り世代との落差が浮き彫りに

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一方、「笑顔」の高齢者たち

 就職難にあえぐ若者に比べ、街で見る高齢者たちの表情は明るいと感じることが多い。理由のひとつは年金だという。支給額は住んでいる都市、民営企業か公務員か、退職した年齢や役職などで細かく変わってくるが、2025年現在の上海市の平均支給額は月額5,400元(約107,000円)だという。公務員であれば1万元(約199,000円)とも聞く。毎月の生活費は人によってさまざまだが、上海では月に5,000元(約99,000円)あればそこそこの暮らしができる。60代以上は不動産が激安だった時代に購入(中国では「所有」ではなく「使用権」だが)している人が多く、そんな人たちは家賃負担もない。そう聞けば老人たちの笑顔の理由も頷ける。この年金はいまのところ、定期的に増額されているようだ。景気後退の中で、政府がこの年金制度をどこまで維持できるかはわからないが、老人をとりまく現状は恵まれている。この年金は早ければ50代で受け取ることができる。

 平日の昼間、オープンしたばかりのスポットや凝った内装のレストランに行くと、おしゃれをしてSNS用の写真を撮る60代くらいのグループによく遭遇する。女性たちはカラフルなワンピースにハンドバッグ、サングラスというスタイルだ。彼らに話を聞くこともあるが、とにかくアクティブだと感じる。最新のレストランやSNSの情報もよく知っている。旅行は甘粛省、山西省などの僻地が人気らしい。「団体旅行はつまらない。レンタカーで自由に移動する方が便利」だという。

 若い人たちが、「まぁ、あの世代はお金も時間もあるから」とこぼしているのを聞く機会が増えた。若者向けのテナントが揃う最新モールに大挙して押し寄せ、写真やショート動画を撮るのに夢中になっている高齢者層を、若いアルバイト店員が苦笑いしながら眺める様子もよく見かける。若者の心境は複雑だろう。高齢者と若者の分断とまではいかないが、その間にできた溝がしだいに広がり始めていることを感じてしまう。

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